解体業者の見積書

解体工事トラブル回避
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※本記事は
「解体工事トラブル回避の全設計図(全10回シリーズ)」の第7回です。


この書き方は危険・この書き方は信用できる

「120万円」が「180万円」に化けるカラクリ

解体工事で一番トラブルが多いのは、「工事中」でも「契約書」でもありません。

実際に最も多いのは、
「見積もりでは120万円だったのに、終わったら180万円になった」
という、見積書段階での失敗です。

安すぎる見積もりは、トラブルが顕在化(形になって現れる)までの
「期間限定の安心」に過ぎません。

業者がリスクを隠して安く見せ、後から爆発した「ツケ」をすべて実費で支払い、
最終責任を負わされるのは”他でもない施主なのです。”

解体工事では、
金額の高さ・安さではなく「どう書いてあるか」だけで、業者の質は8割見抜けます。


1. 危険な見積書に共通する「3つの特徴」

①「一式」が異常に多い

「解体工事 一式」「処分費 一式」。

これは単なる省略ではなく、情報の独占です。

施主に対する
「中身は聞くな、黙って払え」という白紙委任状と同じ。

※「一式」は、数量が増えても減っても価格調整が自由になるため、
業者側にとって極めて都合がいい表記なのです。

反撃の質問:
「この“一式”の中身を、数量と単価で分解して説明してもらえますか?」

これに即答できない業者は、
あとから請求を膨らませる前提で見積もっている可能性があります。


②「別途」「現場判断」という逃げ道

「地中埋設物 別途」
「アスベスト 現場判断」

これが多用されている見積書は、
「何が起きても、上限なしで請求します」という宣言です。

交渉権を100%業者が握る、
非常に危険な状態。

反撃の質問:
「もし地中埋設物が出た場合、m³あたりの撤去単価はいくらですか?」

この質問を嫌がる業者は、
金額を“現場で作る気”満々です。


③ 処分費がブラックボックス

解体費用の約半分は処分費。

それなのに、

「廃棄物処理費 〇〇万円」

これだけの見積書、普通に危険です。

材質別の数量(t数)が書かれていない=水増し・不法投棄・説明不能の三拍子。

※適正処理されていれば、
必ず産業廃棄物管理票(マニフェスト)が発行されます。

反撃の質問:
「廃棄物は材質ごとに何t想定ですか?処分先はどこですか?」

ここで言葉に詰まるなら、即アウト。


2. 信用できる見積書の「最低条件」と金額インパクト

① 数量 × 単価で書かれている

例:「木くず 12.3t × 〇〇円」

数字がある=説明責任を負う覚悟がある業者

逆に数字がない見積書は、
あとで金額の根拠説明をせず、増額しても責任を取らないための書き方です。


② 地中埋設物の「撤去単価」が明記されている

ここが、最も金額差が出るポイント

例:
同じ「8m³」のコンクリートガラでも

  • 単価明記あり:8〜12万円で着地
  • 単価不明(別途):30〜40万円の言い値請求

これは誇張じゃなく、現場の現実

「出たらいくら」を事前に決めるだけで、あなたの資産は普通に守れます。


③ アスベスト調査費が独立している

「調査しない=違法」。

ここを曖昧にする業者は、
後から高額な除去費を突きつけるための地雷
最初から仕込んでいるかもしれません。

※今すぐ契約する必要はありません。
まずは、この見積に「後から増える余地」がないかを確認するだけでOKです。


3. 見積書は「価格表」ではなく「リスクの割り振り表」

見積書を
「どこが一番安いか比べる紙」
だと思っているなら、その認識自体が最大のリスク。

  • 曖昧な業者
     → 全リスクを施主に押し付けて、安く見せる
  • 明確な業者
     → リスクを事前に可視化し、施主と分配する

一番安い見積書が、
結果として「一番高く、一番精神を削られる契約」になる可能性がある。

これは、この業界の常識です。


まとめ

見積書を読める施主が、現場を制する

以下の7項目を、
そのまま業者にメールするか、面談で投げてください。

  • 「一式」を分解して説明できるか
  • 数量と単価が明記されているか
  • 処分費が材質別になっているか
  • 地中埋設物の撤去単価が明記されているか
  • アスベスト調査費が独立しているか
  • 諸経費の中身を説明できるか
  • 想定されるリスクを正直に話すか

回答の内容とスピードで、業者の格はそのまま出ます。

これらをクリアしない業者と契約することは、
目隠しをして工事に臨むのと同じです。

見積書を読めない施主は、現場で必ず不利になります。
——これは例外なく、です。


本記事は、解体現場に25年以上携わってきた筆者の経験に基づき、
一般的な判断材料としてまとめています。

 この記事を書いた人

秋ちゃん
解体業に25年以上従事。
1級建設機械施工技士/建築物石綿含有建材調査士。
木造・RC・鉄骨解体、アスベスト除去(レベル1〜3)など、
現場責任者として多数の解体工事に携わる。

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よくある質問(FAQ)

Q1. 「一式」って書いてあっても、ちゃんとした業者もいますよね?

A. 正直に言うと、ほぼないと思ってください。

「一式」が悪なのではなく、
“一式の中身を聞かれたときに即答できない”業者が危険。

優良業者なら

  • 数量
  • 単価
  • 想定条件

をその場で説明できる。
できないのは、
最初から後出し前提 or 自分でも把握してないかのどちらか。


Q2. 地中埋設物は本当に事前に分からないんだから、別途は仕方なくない?

A. 出るかどうかは分からなくても、「単価」は決められます。

問題は

  • 出るかどうか → 不明
  • 出たらいくらか → 不明

この後者を決めてないこと。

単価を決めない=業者の言い値を丸呑みする契約になる。

「別途」自体より、単価未設定の別途がアウト。


Q3. 廃棄物のt数なんて、現場で変わるんじゃないですか?

A. 変わります。でも“想定ゼロ”は論外。

優良業者は

  • 建物構造
  • 坪数
  • 過去の実績

から想定t数を出します。

誤差が出ても「なぜ増えたか」を説明できる。

最初から「やってみないと分からない」は、説明放棄宣言


Q4. アスベスト調査費が見積りに入ってないけど、後からでもいい?

A. ダメです。

理由は3つ。

  1. 調査は法的義務
  2. 後出しで「除去費」が跳ね上がる
  3. 工事中断リスクがある

調査費を曖昧にする業者は「見積りを安く見せたいだけ」

安く見せる=あとで回収する気満々。


Q5. 他社より明らかに安い見積りは、やっぱり怪しい?

A. 安い理由を“数字で説明できるなら”OK。できないなら危険です。

安全な安さ
→ 工程効率・処分ルート・重機条件の説明あり

危険な安さ
→ 「うちは企業努力で」「長年の付き合いで」
全部フワッとしてる

数字が出ない安さは、リスクの先送り


Q6. 見積書の段階で細かく聞くと、嫌がられませんか?

A. 嫌がる業者は、最初から切っていいです。

むしろ

  • 嫌がる
  • 露骨に態度が変わる
  • 「細かい人ですね」と言う

この時点で、将来のトラブル確定演出

優良業者ほど「いい質問ですね」って言う。
ほんとに。


Q7. 結局、見積書で一番見ておくべき1点は?

A. 「数字が逃げ場を潰しているか」それだけです。

  • 数量
  • 単価
  • 上限
  • 条件

これが書いてある=逃げられない

書いてない=あとでいくらでも逃げられる


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この見積書チェックは、
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こちらが最終回答です。

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