※本記事は
「解体工事トラブル回避の全設計図(全10回シリーズ)」の第9回です。
終わった瞬間に始まる、最後の落とし穴
◆「工事は終わりました」が一番危ない
解体工事で、最も判断が雑になる瞬間。
それが、現場が静かになり、業者から
「完了しました」
と言われた直後です。
- 騒音からようやく解放された。
- もうこれ以上、業者と関わりたくない。
この解放感こそが危険なのです。
静かになった現場が生む安心感は、業者が不備を残したまま去るための
「確認不足を誘う空気」になりかねません。
完了の合図は、休息ではありません。
交渉の主導権を失う前に行う、最終検収の開始合図です。
※この記事は、【完全ガイド】解体工事トラブル回避の全設計図の
STEP8〜STEP9(追加請求・完了確認)にあたります。
見積・契約・近隣・事故まで含めた全体像を把握したい方は、先に全設計図をご覧ください。
👉 【完全ガイド】解体工事トラブル回避の全設計図
1|なぜ「完了後」にトラブルが集中するのか
業者は早く次の現場へ行きたがり、施主は早く日常に戻りたがる。
この温度差が、重大な見落としを生みます。
覚えておいてください。
工事が終わった瞬間、施主の交渉力は急落します。
業者が協力的なのは、全額を支払う前まで。
主導権を握れるのは、
支払う“前の今”しかありません。
2|完了時に必ず確認すべき【5つのチェックと、即発生する損失】
「完了です」と言われたら、
以下の5点を“放置すれば即損失になる項目”として確認してください。
① 地中の「残置物」がないか
損失:
次工程で、数万〜数十万円単位の追加工事費が再発生。
② 整地が「用途基準」を満たしているか
損失:
建築会社に着工NGを出され、
重機の再搬入・再整地費用が発生。
③ マニフェスト(産廃証明)を回収したか
損失:
不法投棄が発覚した場合、
施主が排出者責任(法的責任)を問われる可能性。
④ 工事後の「追加請求」が出ていないか
損失:
「そういえば…」を認めた瞬間、
事後承認=支払義務確定。
⑤ 建物滅失登記の書類は揃っているか
損失:
存在しない建物に、
固定資産税を払い続けることになる。
3|「終わった後」にしか出てこない時間差リスク
特に注意すべきなのが、
隣家からの“遅れてくるクレーム”です。
工事中の振動によるヒビは、
業者が去った数日後に気づかれることがあります。
だからこそ、完了時にやるべきことは一つ。
近隣と一緒に境界付近を確認し、「完了時点での合意」を固めること。
これが、
後日の言いがかりを封じる最強の防波堤になります。
4|完了時に必ずやる「施主側の最終アクション」
■ 敷地を一周歩く
遠くから眺めない。
自分の足で、地面の感触と異物を確認する。
■ 次の施工会社に、その場で確認させる
ただし、仕上げの基準は次の施工会社ではなく、解体契約で決めた内容です
(現状整地/真砂整地/砕石整地など)。
次の施工会社に立ち会わせる目的は、
契約どおりに仕上がっているかを第三者の目で確認させること。
契約水準を満たしていない場合は是正を求める。
契約水準は満たしているが次工程に不足がある場合は、
それは契約設計の問題として切り分けます。
■ 書類と引き換えに決済する
マニフェスト等、必要書類が揃うまでは
最終代金を支払わない。
これは強気ではなく、
正当な管理行為です。
※今すぐ契約する必要はありません。
支払う前に、条件の抜けを確認するだけでOKです。
まとめ
解体工事は「終わったら勝ち」じゃない
解体工事のトラブルは、完了確認だけで防げるものではありません。
見積・契約・追加請求まで含めて一つの設計として管理する必要があります。
👉 【完全ガイド】解体工事トラブル回避の全設計図
解体工事は、
契約で8割決まり、見積もりで9割防げます。
しかし、
残りの1割――完了確認を落とすと、
それまでの努力はすべて無駄になります。
後悔している人が、必ず言う一言。
「そこまで見てなかった……」
この一言を言わずに済む状態を作ること。
それが、解体工事の本当の完了です。
本記事は、解体現場に25年以上携わってきた筆者の経験に基づき、
一般的な判断材料としてまとめています。
この記事を書いた人
秋ちゃん
解体業に25年以上従事。
1級建設機械施工技士/建築物石綿含有建材調査士。
木造・RC・鉄骨解体、アスベスト除去(レベル1〜3)など、
現場責任者として多数の解体工事に携わる。
よくある質問(FAQ)
Q1. 業者が「もう完了です」と言ったら、そのまま支払ってもいい?
A. ダメ。
書類(マニフェスト・解体証明など)と現場確認が終わるまでは未完了。
支払い=検収完了と見なされ、交渉力はゼロになります。
Q2. マニフェストは必ず施主が保管する必要がありますか?
A. はい。
不法投棄が発覚した場合、最終的に責任を問われる可能性があるのは施主です。
「業者が持っている」は何の保険にもなりません。
Q3. 整地の仕上がりは、どこまで求めていい?
A. 整地の仕上がりは、解体工事の契約内容で決まります。
整地には主に以下があります。
- 現状整地(大まかに均す)
- 真砂整地
- 砕石整地
どこまで行うかは、契約時に明記されている内容がすべてです。
「更地にしました」という言葉に明確な基準はありません。
次の施工会社に確認するのは参考にはなりますが、
解体業者への要求根拠にはなりません。
重要なのは、
★ 見積書・契約書に整地内容が具体的に書かれているかどうかです。
Q4. 工事完了後に追加請求されたら、支払わないと揉めますか?
A. 揉めません。
むしろ、
「書面合意前の作業は認められません」
と冷静に伝えるのが正解。
感情ではなく、プロセスの問題です。
Q5. 隣家から後日クレームが来たらどうすればいい?
A. 完了時点での写真・確認記録があれば主導権は施主側。
なければ、業者不在の状態で施主が矢面に立つことになります。
だから完了時確認が重要です。
Q6. 建物滅失登記は業者がやってくれますか?
A. やりません(基本)。
業者は「解体証明書」を出すだけ。
登記は施主の責任。放置すると固定資産税が止まりません。
Q7. 「もう終わったし、細かいことはいいか」と思ってしまいます
A. その瞬間が、一番損をする瞬間です。
解体工事は
「終わったら楽になる」
ではなく、
「終わる直前が一番重要」な工事です。
次回予告(最終回)
第10回|解体工事は「発注」ではなく「管理」である
見積・契約・追加請求・完了確認。
ここまで読んできたあなたは、もう気づいているはずです。
解体工事の基本は、
「いい業者かどうか」ではなく、
「施主が主導権を持ち続けたかどうか」で決まる。
最終回では、この全シリーズを
一つの判断原則(哲学)として回収します。






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