※本記事は
「解体業者選びで失敗しないための全9回シリーズ」の第6回です。
― 「想定外」は、ほぼ例外なく設計されています ―
【記事の要約】
「地中からゴミが出たので追加費用です」と言われ、
「運が悪かった」と諦めていませんか。
実は、解体工事の追加費用の多くは、
現場の事故ではなく、見積もり段階で「設計」されています。
安さで契約を取り、後から回収する。
その業界構造と、施主が逃げられなくなる「人質状態」の心理を、
現場の視点から整理します。
この記事では、安さの裏にある本当の代償と、
追加費用が生まれる仕組みを知るための判断材料をお伝えします。
■ なぜ「追加費用=運が悪かった」ではないのか

解体工事が終わってみれば、当初の見積もりより数十万円も高くなっていた……。
そんなとき、多くの施主様は、
「地中から何か出たなら仕方ない」
「運が悪かった」
と自分を納得させてしまいます。
ですが、現場で長年この業界の裏側を見てきた僕から言わせれば、追加費用の多くは「事故」ではありません。
それは、見積もりの段階で既に「設計」されていることがほとんどなのです。
※ 追加費用は、解体業者選びにおける判断軸の一つにすぎません。
見積・契約・工事中の判断まで含めて、失敗しないための判断軸を全体像として整理しています。
👉 【完全ガイド】解体業者選びで失敗しないための9つの判断軸と管理術
1. 業者が言う「想定外」の正体
ここで言う「想定外」は、現場の偶然ではなく、見積もり段階の判断の結果です。
追加費用が発生したとき、業者は決まってこう言います。
「これは想定外でした」
多くの施主様は
「予期せぬことが起きたんだな」
と受け止めてしまいますが、実態は違います。
業者が言う「想定外」とは、
『想定はしていたが、見積もりに入れると他社に負けるから書かなかったこと』
であるケースが多いのです。
地中物、付帯撤去、養生の追加……。
価格競争に勝つために、これら「後から出せる費用」をあらかじめ外しておく。
つまり追加費用は、「うっかり」ではなく、
「勝つための戦略」として生まれている場合があります。
2. なぜ施主は「納得してしまう」のか|数字の罠
工事中、地中から構造物が出てきたとき、業者はこう説明します。
「これ、処分に大型ダンプ〇台分かかります。追加で〇〇万円です」
この瞬間、施主はほぼ反論できません。
なぜなら、
・本当にダンプ〇台分なのか
・処分単価は妥当なのか
その場で、施主が確認する術はないからです。
業者が悪い、施主が悪い、という単純な話はありません。
問題は、情報が一方にしかない構造です。
数字が具体的であればあるほど、人はそれを「専門的だ」「正しそうだ」と感じてしまいます。
この“もっともらしい数字”こそが、追加費用を言い値にしてしまう最大の要因です。
3. 追加費用を「断れない」心理状態
さらに、現場の状況が施主を追い詰めます。
目の前で重機が止まり、作業員が手を止めて、あなたの返事を待っている。
- 「早く決めないと工期が遅れる」
- 「近隣に迷惑がかかる」
この「人質状態」(工事・近隣・期限を盾に判断を迫られる状況)に置かれたとき、人は冷静な判断を失います。
業者が仕掛けた「想定外」という罠は、この心理的な弱みに一気に畳み掛けてくるのです。
4. それでも「本当に防げない追加費用」は存在する
ここで一つ、はっきりさせておきます。
すべての追加費用が悪ではありません。
図面にも履歴にもない地下室や、想定外の深さにある巨大な岩など、
真実の「不可抗力」は確かに存在します。
ただし、誠実な業者の対応は決定的に違います。
- 発見した時点で、勝手に進めず工事を止める
- 施主を現場に呼び、実物を見せて状況を説明する
- 「撤去する」「残す」「方法を変える」といった選択肢を提示する
工事を勝手に進めておいて、
「やりましたので、追加です」
と請求するのとは、プロセスがまったく別物です。
追加費用の金額そのものではなく、
「どう扱われたか」に、その業者の本性が出ます。
まとめ
◆ 追加費用は「運」ではなく「構造」で決まる
※ 追加費用だけを理解しても、解体工事の失敗は防げません。
業者選びを失敗しないための全判断軸はこちらにまとめています。
追加費用が出るかどうかは、運の問題ではありません。
- どこまで事前に想定したか
- どこまで契約で定義したか
- 主導権をどちらが持っているか
この構造で、ほぼ決まります。
第5回(契約確認)で契約を縛り、
第6回で追加費用の構造を知る。
この2つが揃って、初めて主導権は施主側に戻ります。
※もし今、見積もりや追加費用の説明に少しでも違和感があるなら、
一度、第三者の視点で条件を整理しておくと判断が楽になります。
知識を持つことは、業者を疑うためではありません。
誰かが作った「不利な設計」に、無自覚で乗らないための武器なのです。
※本記事は、特定の業者や工事を否定するものではなく、
追加費用が発生する背景と判断材料を整理したものです。
この記事を書いた人
秋ちゃん
解体業に25年以上従事。
1級建設機械施工技士/建築物石綿含有建材調査士。
木造・RC・鉄骨解体、アスベスト除去(レベル1〜3)など、
現場責任者として多数の解体工事に携わる。
工事中に判断を迫られないためには、契約前に決めることが重要。
しかし現実には、
すべてを完全に予測することはできません。
だからこそ、
最終的に「どこまでが契約どおりか」を
完了時に確認できる状態を作っておく必要があります。
→ チェックリスト
よくある質問(FAQ)
Q1. 追加費用が出るのは、どの業者でも同じではないのですか?
A. いいえ、同じではありません。
追加費用が出やすいかどうかは、
・事前調査の深さ
・見積もりと契約の定義
・工事中の判断プロセス
で大きく変わります。
「必ず追加が出る」わけではなく、出やすい構造を選んでしまっているケースが多いのが実情です。
Q2. 「想定外」と言われたら、支払うしかないのでしょうか?
A. 契約内容によります。
想定外の扱いが契約書でどう定義されているかが重要です。
判断基準や手続きが曖昧なままの契約では、施主側が不利になりやすくなります。
「想定外=自動的に施主負担」ではありません。
Q3. 追加費用の金額が妥当かどうか、施主が確認する方法はありますか?
A. その場で完全に確認することは、ほぼ不可能です。
だからこそ重要なのは、
・事前にどこまで想定されていたか
・工事を止めて説明するプロセスがあるか
・書面で合意を取る仕組みがあるか
です。
金額そのものより、提示のされ方を見てください。
Q4. 工事が止まると言われると、断れない気がします。
A. 多くの施主が、同じ状況で判断を迫られます。
工期、近隣、引き渡し期限。
これらを背負わされた状態では、冷静な交渉は難しくなります。
この「人質状態」が生まれないようにするために、
事前の調査と契約内容が重要になります。
Q5. 追加費用が出た業者=悪徳業者、と考えていいですか?
A. いいえ、そうとは限りません。
本当に防げない不可抗力は存在します。
重要なのは、
・発見した時点で工事を止めたか
・施主に現物を見せて説明したか
・選択肢を提示したか
という対応のプロセスです。
Q6. 安い見積もりを選ぶと、やはり追加費用が出やすいですか?
A. 出やすくなる傾向はあります。
価格競争が激しいほど、
「後から調整できる部分」を残した見積もりになりやすくなります。
安さそのものではなく、安さの理由が説明されているかを確認してください。
Q7. 追加費用を防ぐために、施主ができる一番大切なことは何ですか?
A. 判断を業者任せにしないことです。
すべてを疑う必要はありません。
ただ、
・調査
・契約
・工事中の判断
この流れを理解しておくだけで、
不利な状況に追い込まれる可能性は大きく下がります。
次回予告(第7回)
工事中トラブルの典型パターン
― 揉める現場は、始まる前から決まっている ―






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