解体業者の「責任の境界線」を明確にする|どこまでが標準工事で、どこからが追加費用になるのか?

解体工事の基礎知識
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■ トラブルの8割は「想定外の境界線」から生まれる

解体工事のトラブルの約8割は、依頼範囲が曖昧なまま契約してしまうことが原因です。

”施主が「全部やってくれるもの」と誤解し、追加請求が発生した瞬間に初めて現実を知る”

このパターンが圧倒的に多いのです。

知らない施主だけが損をし、失敗すると追加費用が 数十万円 に膨らむケースも珍しくありません。

こうした追加費用トラブルは、偶然ではありません。

契約前に「どこまでが業者の責任で、どこからが施主負担か」という境界線を設計していないことが原因です。

この境界線を含め、解体工事で起きる主要トラブルを構造的に整理したのが
👉【完全ガイド】解体工事トラブル回避の全設計図です。

本記事では、こうした“境界線の罠”を完全に避けるために、標準工事の範囲と追加費用が生まれるポイントを明確にします。


1:標準工事の本当の範囲と、施主が陥る3つの誤解

■ 1-1. 標準工事に含まれる「3つの要素」とその構造的理由

以下は一般的な範囲であり、業者ごとに違うため 契約前の明記が必須 です。

① 本体解体(躯体・基礎の撤去)
  • 標準工事として含まれる作業です。
  • ただし 地中埋設物(浄化槽・古い杭・コンクリ残骸など)は
    量が不明で見積りが不可能なため 原則含まれません
② 産業廃棄物処分(建物の廃材)
  • 木材・瓦・コンクリートなど、建物から発生した“産廃”の処分は含まれます。
  • しかし 残置物(家具・家電)は一般廃棄物扱いで行政管轄のため、標準工事には含まれず 別料金 となるのが普通です。
③ 整地(更地化)
  • 建物撤去後に表面を均す作業は標準範囲です。
  • ただし 地盤改良は含まれません
    地盤改良には瑕疵保証が必要で、解体業者は法的に責任を負えないためです。

■ 1-2. 施主が陥る「3つの致命的な誤解」

誤解1:『残置物も全部込みでしょ?』と思い込んだ施主の末路

実際:

残置物は一般廃棄物であり、手続きも処分方法も異なるため産廃より 割高な追加費用 が発生します。

誤解2:『地中物も当然含まれるでしょ?』という油断が招く損失

実際:

地中物は量が見えず見積もり不可能なため、発見された瞬間に 追加費用爆弾 として施主に降りかかります。

誤解3:『地盤改良までやってくれる』と思い込む施主の落とし穴

実際:

地盤改良は建築側で行う工事であり、解体業者は瑕疵保証を持てないため完全に別工事 です。


2:トラブル回避のための「3つの最重要境界線」

■ 2-1. 【境界線①】ライフラインの停止・撤去(工期遅延の元凶)

結論:忘れると初日から工事が止まります。

  • 電気・ガス・水道の停止や解約は 施主の義務 です。
  • 名義が施主にあるため、解体業者は法的に手続きできません。
  • ガス閉栓忘れ → 工事が数日〜1週間止まる のは実際によくある事例です。

■ 2-2. 【境界線②】残置物処理(割高になる根本理由)

結論:残置物は施主自身が撤去しない限り、確実に高くつきます。

  • 家具・家電は“施主が持ち込んだ一般廃棄物”のため、
    解体業者が勝手に処理すると 違法扱い になります。
  • 結果として、残置物は産廃より高い料金が設定されるのが普通です。

■ 2-3. 【境界線③】地中埋設物の費用負担(追加費用の最大トラブル)

結論:地中物は標準工事外。だから契約書に“単価”を書かないと危険です。

  • 地中埋設物の撤去は見えない工事であり、
    契約書に単価がないと 業者の言い値 になります。
  • ㎥単価が不明 → 10万円と思っていたものが150万円になる
    という典型的トラブルが実際にあります。

地中埋設物だけでなく、近隣対応・工期・破損事故・契約書の書き方まで含めて
“施主が後悔しない設計”をまとめたのが、こちらです。

👉【完全ガイド】解体工事トラブル回避の全設計図


3:追加費用をほぼ防げる「4つの質問」

「これだけ聞けば守れる」という施主の武器を、優先度順に整理しました。


Q1:地中埋設物が見つかった場合、撤去費用の㎥単価はいくらですか?

効果:追加費用が青天井になる最悪パターンを完全に防ぎます。
(これを聞かないと、10万円 → 150万円 に膨らむ可能性があります)


Q2:残置物(家具など)は見積書のどこに含まれていますか?

効果:割高な残置物費用が“標準工事に紛れ込む”のを防げます。


Q3:産業廃棄物処分費は、廃材ごとに㎥単価を教えてください。

効果:一式計上による水増しリスクを排除できます。


Q4:浄化槽の最終汲み取りは、施主手配ですか?業者代行ですか?

効果:ライフライン関連の手配ミスによる工期遅延を防ぎます。


まとめ:知識のない施主だけが地雷を踏む

解体業者の責任範囲は 「標準工事」まで と明確に決まっています。

残置物・ライフライン・地中物

この3つを曖昧にしたまま契約すると、追加費用は必ずあなたに降りかかります。

あなたが今日すべき最初の一手は、

見積書の「一式」をすべて潰すこと。

※「一式」や境界線が曖昧なままだと、追加費用はほぼ確定します。
まずは条件が揃った形で見積もりを取り直してください。

もし、
・何から確認すればいいか分からない
・自分のケースで抜け漏れがないか不安

そう感じたら、まず全体像を把握してください。

👉【完全ガイド】解体工事トラブル回避の全設計図

境界線を理解し、契約で明記すれば、あなたはもう“追加費用で泣かされる側”には戻りません。


本記事は、解体現場に25年以上携わってきた筆者の経験に基づき、
一般的な判断材料としてまとめています。

 この記事を書いた人

秋ちゃん
解体業に25年以上従事。
1級建設機械施工技士/建築物石綿含有建材調査士。
木造・RC・鉄骨解体、アスベスト除去(レベル1〜3)など、
現場責任者として多数の解体工事に携わる。

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よくある質問(FAQ)

Q1. 「標準工事」って、法律で決まっている範囲なんですか?
A. いいえ、法律で一律に決まっているわけではありません。

ただし業界的に共通認識として外される項目(残置物・地中埋設物・地盤改良など)はあり、そこを曖昧にするとトラブルになります。


Q2. 見積書に「解体工事一式」と書いてあるのは問題ですか?
A. かなり危険です。

「一式」は境界線をぼかすための表現なので、追加費用が出やすい契約になります。
最低でも、残置物・地中埋設物・処分費は分けて書かせるべきです。


Q3. 残置物を少し残したままでも解体は始められますか?
A. 始められることもありますが、その時点で追加費用確定です。

しかも一般廃棄物扱いになるため、産廃より割高になります。
費用を抑えたいなら、解体前に施主側で片付けるのが正解です。


Q4. 地中埋設物は、出てきたら必ず払わないとダメ?
A. 原則、施主負担です。

ただし、契約時に単価が明記されていれば「高すぎる請求」は防げます。
問題は金額そのものより、「言い値になること」です。


Q5. 契約後に「やっぱり含まれてませんでした」と言われたら?
A. 見積書と契約書に書いていなければ、基本的に業者の主張が通ります。

だからこそ、契約前に境界線を潰す必要があります。
契約後に揉めるのは、ほぼ負け戦です。


Q6. ライフラインの停止は、どこまで施主がやる必要がありますか?
A. 電気・ガス・水道の解約や停止連絡は、基本的に施主です。

名義の問題があるため、業者は勝手に手続きできません。
特にガス閉栓忘れは、工事ストップの典型例です。


Q7. 地盤改良まで解体業者に頼むのはダメ?
A. ダメではありませんが、別契約・別責任になります。

地盤改良は瑕疵保証が絡むため、解体業者の本業ではありません。
解体と建築は、役割が完全に分かれています。


Q8. じゃあ結局、施主は何を一番気にすればいい?
A. これだけです。

・「標準工事に含まれないもの」を全部書面で確認
・見積書の「一式」を分解
・地中埋設物の単価を必ず聞く

これをやれば、追加費用トラブルの8割は防げます。


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