※本記事は
「解体工事トラブル回避の全設計図(全10回シリーズ)」の第6回です。
ー見ないと危ない条文・守るべき一文ー
★契約書は「信頼の証」じゃない
「あの業者は感じが良かった」
「説明もしっかりしてくれた」
そう言って契約書を流し読みでハンコを押すのは、
自分から防具を外して戦場に出る行為です。
はっきり言います。
★ 契約書は、工事が順調な時に読むものではありません
★ 揉めた“あと”に読む、唯一の法的資料です
人柄も信頼感も、
トラブルが起きた瞬間に 1ミリも効力を持ちません。
契約書に
- 書いてあること → 守られる
- 書いていないこと → 施主の自己責任
この現実から、目を逸らさないでください。
👉 解体工事トラブル全体像と防ぎ方の設計図は、
【完全ガイド】解体工事トラブル回避の全設計図 を先にご覧ください。
1. なぜ解体工事の契約書は軽視されやすいのか
1-1. 「壊すだけだから簡単」という錯覚
建てるより壊す方が単純。
工期も短いし、大きな問題は起きないだろう。
──この思い込みが、
穴だらけの契約書を量産します。
実際の解体工事は
- 未知の地中
- 現場判断の連続
- 近隣・天候・追加作業の変数だらけ
むしろ、契約設計が最も重要な工事です。
1-2. 見積書=契約内容だという致命的誤解
これは本当によくある落とし穴です。
見積書にどれだけ詳しく書いてあっても、
契約書に反映されていなければ法的拘束力はありません。
見積書だけに存在する約束は、
揉めた瞬間に 「なかったこと」 になってしまいます。
2. 契約書に潜む「危険ワード」と立証責任
以下の言葉、入っていたら要注意です。
- 「工期は目安とする」
- 「誠意をもって対応する」
- 「必要に応じて」
- 「一式」
これらはすべて
業者を守るためのクッションワード。
なぜ危険か?
★トラブル時に施主側が“業者の非”を証明できなくなるから
解釈の主導権を業者に渡した瞬間、あなたは反論できなくなります。
3. 連載5回分の「答え合わせ」を契約書に刻め
ここまで読んできた人なら、もう分かるはずです。
トラブル対策は、全部契約書に集約できます。
- 第1回(追加費用)
→ 単価明記+「事前説明+書面合意」フロー - 第2回(近隣対応)
→ 苦情の一次窓口は業者と明記 - 第3回(工期遅延)
→ 完了予定日の定義と遅延時の報告・調整義務 - 第4回(事故・破損)
→ 保険名・免責金額・事故受付番号の共有 - 第5回(認識ズレ)
→ 口頭合意は無効、記録優先を明文化
★ここまで入れて初めて
「トラブルを前提に設計された契約」 になります。
4. 絶対に入れておきたい「守る一文」
既存の契約書を修正すると、
業者が嫌がるケースもあります。
そんな時は、特約事項で十分です。
⇩ この一文を入れてください。
「本契約に定めのない事項、または内容に変更が生じる場合は、
事前に内容および金額を書面(電子メール等を含む)で協議し、
双方合意のうえで実施するものとする。」
これがあるだけで、
- 勝手な作業進行
- 後出し請求
- 言った言わない
を物理的に封じ込められます。
嫌がる業者ほど、
あなたのチェックが「効いている」証拠です。
※今すぐ契約する必要はありません。
この一文が入っていない契約で進んでいないかを、まず確認してください。
5. 契約書への反応で業者のレベルは分かる
条文追加をお願いした時、反応を見てください。
良い業者
- 「実務的に問題ありません」
- 理由を論理的に説明できる
危ない業者
- 「今まで問題ありませんでした」
- 「信頼してもらえないなら…」と感情論
信頼は、
人柄ではなく 「曖昧さを排除した条文」 で作られます。
まとめ
ー契約書を制する施主が、現場を制するー
解体トラブルは運ではありません。
ほぼすべて、契約前に防げます。
契約書は最後の保険ではなく、
揉めない構造を作る最初の設計図です。
整理された契約書がある現場ほど
- 現場は落ち着く
- 業者も動きやすい
- トラブルは最小化される
★ 契約書を制する施主が、現場を制します。
👉 これらを一体で管理する考え方は、
【完全ガイド】解体工事トラブル回避の全設計図 にまとめています。
本記事は、解体現場に25年以上携わってきた筆者の経験に基づき、
一般的な判断材料としてまとめています。
この記事を書いた人
秋ちゃん
解体業に25年以上従事。
1級建設機械施工技士/建築物石綿含有建材調査士。
木造・RC・鉄骨解体、アスベスト除去(レベル1〜3)など、
現場責任者として多数の解体工事に携わる。
よくある質問(FAQ)
Q1. 契約書は業者のひな形のままで問題ありませんか?
A. 問題ありません。
ただし「無条件でOK」は危険です。
ひな形自体は問題ありませんが、
それは業者を守る前提で作られていることを忘れてはいけません。
重要なのは
- 曖昧な表現がないか
- 連載で解説してきたリスク(追加費用・近隣・遅延・事故・認識ズレ)が
契約書に反映されているか
ひな形は「ベース」であって、「完成品」ではありません。
Q2. 契約書の修正や特約追加をお願いすると、嫌がられませんか?
A. 嫌がる業者もいます。
でも、それ自体が判断材料です。
実務的に問題ない業者ほど、
「内容を明確にすること」を嫌がりません。
逆に
- 「今まで問題ありませんでした」
- 「そこまで疑われると…」
と感情論に逃げる業者は、
トラブルが起きた時も同じ態度を取ります。
契約前に分かって、むしろラッキーです。
Q3. 見積書に細かく書いてあれば、契約書は簡単でいいのでは?
A. いいえ。
法的にはまったく別物です。
見積書は「価格提案」、
契約書は「法的拘束力のある約束」です。
契約書に反映されていない内容は、
トラブル時には存在しない約束として扱われる可能性があります。
重要な条件は、必ず契約書または特約事項に落としてください。
Q4. 契約書に入れる「守る一文」は、本当に効果がありますか?
A. 効果は絶大です。
この一文があるだけで、
- 勝手な追加作業
- 後出し請求
- 「聞いてない」「言ってない」
のほとんどを未然に止められます。
特に「書面(メール・LINE含む)」を明記することで、
現場判断の暴走を確実に抑えられます。
Q5. 電子メールやLINEでの合意でも、契約上有効ですか?
A. 有効です。
契約書に
「書面(電子メール等を含む)」と明記していれば、
メールやLINEの合意も証拠能力を持ちます。
むしろ現場では、
即時性のある電子記録の方が実務的です。
Q6. 「誠意をもって対応する」と書いてあれば安心では?
A. 安心はできません。
「誠意」は数値化も定義もできません。
トラブル時に
- どこまでやるのか
- 誰が判断するのか
が一切決まっていないため、
結局は業者側の解釈が通るケースがほとんどです。
誠意より、手順と責任範囲を決めてください。
Q7. 契約書を細かくすると、現場がやりにくくなりませんか?
A. 逆です。現場はむしろ楽になります。
ルールが曖昧な現場ほど、
判断が止まり、責任の押し付け合いが起きます。
整理された契約書は
- 判断が早い
- 無駄な確認が減る
- トラブルが起きにくい
結果として、工事はスムーズに進みます。
Q8. 契約書をしっかり読めば、トラブルは完全に防げますか?
A. 完全には防げません。
ただし、
- 被害を最小限に抑える
- 施主が矢面に立たない
- 金額と責任をコントロールする
ことは確実にできます。
契約書は「トラブルゼロ」を作るものではなく、
「致命傷を防ぐ装備」です。
次回予告|第7回
解体業者の見積書|この書き方は危険・この書き方は信用できる
契約書を読めるようになった次は、
そもそも契約してはいけない業者を、見積書の行間から見抜く方法を解説します。






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