※本記事は
「解体業者選びで失敗しないための全9回シリーズ」の第7回です。
― 揉める現場は、始まる前から決まっている ―
【記事の要約】
「工事が始まった途端、業者の態度が変わった」
「近隣から自分に直接クレームが来た」
こうした工事中のトラブルは、運悪く起きた事故ではありません。
揉める現場というのは、工事が始まる前の時点で、すでに仕組みが出来上がっています。
なぜ業者のミスが、施主自身の社会的信用の問題に変わるのか。
なぜ現場は、施主の知らないところで判断を進めてしまうのか。
現場を知り尽くした立場から、トラブルが噴き出す現場の前兆と、主導権を渡さないために施主が持つべき管理の視点を解説します。
◆ なぜトラブルは「工事中」に表面化するのか
解体工事のトラブルは、工事が始まってから突然起きるように見えます。
しかし実際は、「契約前・着工前」に決めなかったことが、工事という負荷がかかった瞬間に表面化しているだけです。
※ 工事中トラブルは、解体業者選びにおける判断軸の一部にすぎません。
契約前・着工前に何を決めておくべきかを含め、失敗しないための判断軸を全体像として整理しています。
👉 【完全ガイド】解体業者選びで失敗しないための9つの判断軸と管理術
工事が始まれば、重機が動き、粉塵が舞い、近隣住民の注目の的です。
この段階で起きるトラブルは、施主にとって最も精神的な負担が大きく、しかも逃げ場がありません。
工事は止まらず、近隣の目は集まり、判断はその場で迫られます。
1. 追加費用を巡る対立が一気に激化する
工事中トラブルの起点になりやすいのが、やはり”お金の問題”です。
- 地中からゴミや岩が出た
- 予定外の補強作業が必要になった
- 天候やトラブルで工程が変わった
問題は金額そのものではありません。
事前に決めていなかったことを、重機が止まった切迫した状態で判断させられることにあります。
第6回で触れた「人質状態」は、工事中という現実の中で一気に完成します。
→ 第6回:追加費用が発生する本当の理由
この時点で、施主が冷静な交渉をする余地はほとんど残されていません。
2. 近隣トラブルの責任が施主の責任にされる
施主が本当に恐れるべきなのは、壊し方の良し悪しではなく、近隣との関係悪化です。
- 工事前の挨拶が形だけで、誠意が感じられない
- 説明のないまま早朝から重機が入り、振動や騒音が出る
- 道路の通行止めなど、近隣の不便を当然のものとして扱う
こうした場面で、近隣から最初に連絡が行く先は、業者ではなく施主であることが少なくありません。
業者は数週間で現場を去ります。
しかし施主は、その土地に住み続ける、あるいは売却するという「一生の付き合い」が残ります。
業者のその場しのぎの不手際による社会的信用の失墜というツケを、一生払い続けるのは、工事を発注した施主であるあなたなのです。
3. 「現場判断」で話が見えなくなる
トラブルの多い現場ほど、「これは現場判断で進めました」という言葉が多用されます。
本来、現場判断は効率を上げるためのものです。
しかし実際には、
- プロセスを説明する手間を省く
- 不都合な事実を事後報告にする
- 施主に詳細を知らせない
といった、施主に説明しないための都合のいい逃げ道として使われるケースが後を絶ちません。
これを防ぐのに、専門的な知識は必要ありません。
第5回で解説した「事後報告は認めない」という契約上の約束を、淡々と守らせる姿勢。
それだけです。
→ 第5回:契約前に必ず確認すべき条文
4. 窓口と現場のズレが混乱を生む
工事が始まると、営業担当と現場責任者の話の食い違いが表面化します。
営業:「サービスでやる」と言っていた。
現場:「そんな話は聞いていない。やるなら追加だ」と言う
これは、契約を取ることを優先した営業と、実務を担う現場との情報の伝言ゲームが破綻している状態です。
契約書にハンコを押した途端、営業が前線から退くような業者は、このズレを施主に押し付けて解決しようとします。
その結果、施主だけが板挟みになります。
工事中トラブルが起きる現場に共通する前兆
これらのトラブルには、必ず前兆があります。
- 着工前の説明が極端に少ない
- 質問に対して「大丈夫です」と根拠のない返答が多い
- 打ち合わせの記録を残したがらない
これらが一つでも当てはまる場合、工事が始まってから問題が起きる確率は一気に上がります。
まとめ
◆ 工事中のトラブルは偶然ではない
※ 工事中トラブルだけを理解しても、解体工事の失敗は防げません。
業者選びから管理までを整理した全判断軸はこちらです。
工事中トラブルは、運や性格の問題ではありません。
- 契約前に何を決め、書面に残したか
- 着工前に営業・現場・施主で何を共有したか
- 主導権をどちらが握っているか
この構造で、結果はほぼ決まります。
トラブルは現場で突然起きているのではありません。
あなたの事前準備の中で、すでに始まっているのです。
※もし「工事が始まってから主導権を失うのが怖い」と感じたなら、
契約前の段階で、第三者の視点を一度挟んでおくという選択肢もあります。
※この記事は、解体工事の現場と契約トラブルを長年見てきた立場から書いています。
この記事を書いた人
秋ちゃん
解体業に25年以上従事。
1級建設機械施工技士/建築物石綿含有建材調査士。
木造・RC・鉄骨解体、アスベスト除去(レベル1〜3)など、
現場責任者として多数の解体工事に携わる。
よくある質問(FAQ)
Q1. 工事中にトラブルが起きたら、施主はどう対応すればいいですか?
A. まず感情的に反応しないことが最優先です。
その場で判断を迫られても、即答せず「一度状況を整理させてください」と時間を取ってください。
事前に契約やルールが決まっていれば、それを淡々と確認するだけで済みます。
Q2. 近隣から直接クレームが来た場合、施主が対応しなければいけませんか?
A. 原則として、工事に関する対応は業者の責任です。
ただし、現実には施主に連絡が来るケースが多いため、業者に即連絡し、対応を任せる姿勢を明確にしてください。
施主が前面に出続けると、責任まで引き受けさせられやすくなります。
Q3. 「現場判断で進めました」と言われた場合、受け入れるしかないですか?
A. 受け入れる必要はありません。
事前に「事後報告は認めない」「追加作業は事前確認」というルールを決めていれば、その確認を求めてください。
現場判断そのものが問題なのではなく、説明と合意がないことが問題です。
Q4. 営業と現場で話が食い違っている場合、誰に確認すべきですか?
A. 最終的な判断責任者をはっきりさせる必要があります。
「誰が決定権を持っているのか」を確認し、その人物から正式な説明を受けてください。
板挟みのまま進めると、施主だけが不利になります。
Q5. 工事中のトラブルは、施主が現場に頻繁に行けば防げますか?
A. 必ずしもそうではありません。
大事なのは、現場に行く回数ではありません。
何かあった時に、誰が、どのタイミングで、施主に確認を入れるのかという決まりがあるかどうかです。
事前に決めておけば、現場に行かなくてもトラブルは抑えられます。
Q6. 工事が始まってから「やっぱり不安」になった場合、対策はありますか?
A. あります。
記録を残すこと、やり取りを曖昧にしないことが有効です。
電話だけでなく、写真や書面(メール・LINEなど)での確認を意識してください。
Q7. 工事中トラブルを完全に防ぐことはできますか?
A. 完全にゼロにすることはできません。
ただし、トラブルが大きくなるか、小さく収まるかは事前準備でほぼ決まります。
問題が起きても「揉めない状態」を作ることは可能です。
Q8. 工事中トラブルが起きやすい業者の共通点はありますか?
A. あります。
説明が少ない、記録を残したがらない、「大丈夫です」が多い業者は注意が必要です。
これらは工事前から見えるサインです。
Q9. この回を読んだあと、次に確認すべきことは何ですか?
A. 工事中の対応が、工事完了後にどう影響するかを知ることです。
次回の記事では、引き渡し後に揉める人と揉めない人の違いを解説します。
工事中に主導権を保つことと、
完了時に曖昧なまま引き渡さないことは、同じ延長線上にあります。
引き渡しの場で、契約どおり終わったかを静かに確認するための
完了確認チェックリストを用意しています。
次回予告(第8回)
工事完了後に揉める人・揉めない人
引き渡し後に後悔する施主と、何も起きない施主。
その分かれ道は、工事中の対応にあります。








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