※本記事は
「解体工事トラブル回避の全設計図(全10回シリーズ)」の第1回です。
◆「見積もりは安かったのに」の正体
解体工事で最も多い不満は、
「最初は安かったのに、結局高くなった」 というものです。
でも、これは騙されたわけでも、運が悪かったわけでもありません。
安さの正体を一言で言うと、これです。
見積もりが安いのは、企業努力ではなく
「不確定な追加費用を最初から入れていない」だけ。
この構造を知らずに契約すると、
業者からの請求がすべて「後出し」に見えてしまいます。
そして、
「自分だけ損をした気分」 になります。
この記事では、追加費用が生まれる仕組みと、
その金額を冷静にコントロールする方法を解説します。
この記事は、解体工事で起きるトラブル全体の中でも
「追加費用」に特化して深掘りしています。
👉 解体工事トラブル全体像と防ぎ方の設計図は、
【完全ガイド】解体工事トラブル回避の全設計図 を先にご覧ください。
1. 追加費用トラブルの正体は「想定外」ではない
1-1. 追加費用はこの3パターンしかない
解体現場で発生する追加費用は、実は限られています。
① 地中埋設物
ガラ、浄化槽、井戸、古い基礎など。
② 残置物・付帯物の見落とし
家財道具、見積もり時に見えていなかった塀・土間など。
③ 契約外作業
近隣配慮のための手壊し作業の増加、大幅な工程変更。
問題は、追加費用が起きることではありません。
これらが起きる前提で
「準備していないこと」がトラブルの原因です。
1-2. なぜ見積もり時に確定できないのか
地中は、掘ってみなければ分かりません。
建物の基礎下も、事前確認は不可能です。
解体工事は
「完成品を買う契約」ではなく、未知の領域を掘削する工事です。
この前提を知らないと、
- 説明不足=悪意
- 追加請求=ボッタクリ
と受け取ってしまい、感情的な対立が生まれます。
2. 施主がハマる「追加費用が暴走する思考」
2-1. 「全部込みだと思ってた」
解体工事に
「標準フルパック」は存在しません。
含まれる内容は、「業者ごと」「工事ごと」に違います。
特に要注意なのが、
見積書に出てくる 「一式」 という言葉。
「一式」は一番トラブルを呼ぶ表現です。
2-2. 「出たら相談してくれるはず」
現場は、止まると損失が出ます。
単価が未決定のまま
「出たので進めます」となると、
- 業者の言い値になりやすい
- 施主は後から知らされる
- 感情がぶつかる
この時点で、関係は壊れます。
3. 防げるのは「発生」じゃない。「金額の暴走」
3-1. 契約書で必ず決めるべき【5項目】
守るべきなのは、工事内容ではありません。
金額の決定権です。
必ず契約前に、次を決めてください。
① 地中埋設物の処理単価
m³・tあたりの単価を明記。
② 事前説明+書面合意
追加作業は「勝手にやらない」。
③ 写真報告を必須条件にする
着工前写真+発生理由の説明がない作業は認めない。
④ 工事範囲の明確化
庭木・塀・土間など、どこまで含むか具体化。
⑤ 過去事例からの概算上限確認
「最大でどのくらい追加になるか」を事前に聞く。
これだけで、精神的な余裕が全然違います。
3-2. 単価が決まっている現場は平和
単価が決まっていれば、
- 工事は止まらない
- 施主が呼び出されない
- 感情的な対立が起きない
現場的に言えば、
単価決定=トラブルへの保険
です。
※追加費用で揉める現場の多くは、
「金額」ではなく「決め方」が決まっていません。
4. 実例で見る「追加費用が増える瞬間」
4-1. ガラ処分費40万円増の落とし穴
処分単価は合意していた。
でも、運搬費が別項目だった。
★ 確認すべきは
「処分費に運搬費が含まれているか」
業者に悪意があるというより、
「説明したつもり」「聞いたつもり」のズレが原因です。
4-2. 付帯物の認識ズレ
「塀は含まれていると思った」
「いや、見積もり外です」
曖昧な表現を残すと、必ずここで揉めます。
5. 施主が今すぐ使えるチェックリスト
5-1. 見積もりで必ず見るべき点
- 「別途」「現場判断」が多くないか
- 単価と数量の根拠があるか
- 運搬費の扱いが明確か
5-2. 契約前に必ず投げるべき一言
- 「地中埋設物の単価を契約書に入れてください」
- 「追加作業は写真と書面合意を条件にしてください」
- 「過去事例から、最大の追加リスクはどれくらいですか?」
これを嫌がる業者は、後で揉めます。
まとめ|追加費用は事故じゃない。
追加費用は起きます。
でも、高額化は防げます。
防ぐ手段はこの3つだけ。
- 単価
- 写真
- 契約書
知らない施主だけが損をする構造から、
ここで抜けてください。
本記事は、解体現場に25年以上携わってきた筆者の経験に基づき、
一般的な判断材料としてまとめています。
この記事を書いた人
秋ちゃん
解体業に25年以上従事。
1級建設機械施工技士/建築物石綿含有建材調査士。
木造・RC・鉄骨解体、アスベスト除去(レベル1〜3)など、
現場責任者として多数の解体工事に携わる。
よくある質問(FAQ)
Q1. 追加費用が発生した場合、支払いを拒否できますか?
A.契約内容によります。
契約書に単価や追加作業のルールが明記されていない場合、金額や作業内容に納得できなければ即時支払い義務はありません。
ただし、契約時に「別途協議」「現場判断」とだけ書かれている場合は、業者側が強く出てくるケースもあります。
そのため、契約前に単価・写真報告・書面合意を決めておくことが重要です。
Q2. 地中埋設物が出たら、必ず施主負担になりますか?
A.原則として施主負担になるケースが大半です。
地中埋設物は「新たに発生した産業廃棄物」ではなく、土地に元から存在していたものと扱われるためです。
ただし、処理単価や上限額を事前に決めていれば、金額のコントロールは可能です。
Q3. 「別途費用あり」と書いてある見積もりは危険ですか?
A.書き方次第です。
すべてが危険というわけではありませんが、
- 単価の記載がない
- 数量の想定がない
- 写真報告や事前合意のルールがない
この3点が揃っていない「別途費用」は、後から揉める確率が非常に高いです。
Q4. 見積もりが一番安い業者を選ぶのはダメですか?
A.理由が説明できない安さは危険です。
安い理由が
- 重機が入りやすい
- 処分場が近い
- 過去の実績が多い
など、構造的に説明できるなら問題ありません。
逆に、「後で調整します」「やってみないと分からない」が多い業者は、追加費用トラブルの温床になります。
Q5. 追加費用の説明は、口頭だけでも問題ありませんか?
A.おすすめしません。
口頭説明は、後で必ず「言った・言わない」になります。
最低限、
- 写真
- 金額
- 作業内容
この3点が書面(LINE・メールでも可)で残る形で合意してから進めるべきです。
Q6. 現場に立ち会えない場合、どうすればいいですか?
A.その場合こそ、契約時のルール決めが重要です。
- 単価を事前確定
- 写真報告を義務化
- 電話 or 書面での承認フローを決める
これをやっておけば、立ち会えなくても工事は止まらず、金額も暴走しません。
Q7. 良心的な業者なら、追加費用はサービスしてくれますか?
A.少額ならあります。
実際、ガラが少量・簡単な作業であれば、請求しない業者もいます。
ただし、それを最初から期待するのは危険です。
サービスは「結果」であって、「前提」にしてはいけません。
Q8. 追加費用トラブルを完全にゼロにすることはできますか?
A.できません。
解体工事は不確定要素がある工事です。
ただし、
- 金額の上限
- 判断のルール
- 責任の所在
これを決めておけば、「揉めない」「精神的に削られない」状態は作れます。
最後に(読者への一言)
追加費用は「事故」ではありません。
管理されていないリスクが、あとから表に出てきているだけです。
この構造を理解して契約できれば、
解体工事は怖いものではなくなります。
👉 これらを一体で管理する考え方は、
【完全ガイド】解体工事トラブル回避の全設計図 にまとめています。
次回予告|近隣トラブルは「連鎖」する
追加費用で業者と揉める
↓
現場の空気が悪くなる
↓
近隣対応が雑になる
↓
最悪の近隣トラブルへ
……これ、本当によくある流れ。
次回は
「施主が矢面に立たずに済む近隣トラブル対策」を
契約前の段階から解説します。





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