解体工事は「予定どおり進むもの」と思われがちですが、実際の現場では予期せぬ遅れが起こることがあります。
そして、この遅れは単なるスケジュールのズレではなく、施主へ直接的な金銭負担として跳ね返ってくるケースが少なくありません。
実は、工期遅延は単体で起きるトラブルではありません。
契約内容・追加費用・近隣対応と連鎖し、最終的に施主の負担を何倍にも膨らませます。
本記事では、現場で日々解体工事を担当している立場から、
「なぜ工期が遅れるのか」
「遅れた場合、施主にどれほどの負担がかかるのか」
を実例ベースで解説します。
■ 解体工事が遅れる主な理由
① 職人不足・応援要請による進行ストップ
近年、解体業界は人材不足が深刻で、職人の確保は以前より難しくなっています。
そのため、応援要請が入った際に作業員が引き抜かれ、現場の進行が止まることがあります。
実例:応援要請で職人が抜かれ、現場が3日間ストップしたケース
解体は職人の人数によって作業速度が大きく変わります。
1〜2名抜けるだけでも工程全体に影響し、3日以上の遅延が発生することは珍しくありません。
当社ではあらかじめ余裕を見て工程を組みますが、それでも現場の状況によっては調整が必要です。
② 埋設物の発見(選別不可のため高額になりやすい)
地中の埋設物は外から判断できず、事前に完全に把握することは困難です。
特に廃材・ガラ混じりの土が出た場合は選別ができないため、処分費が高額になりやすい傾向にあります。
実例:埋設物が発見され、検討・対応に3日かかったケース
- 埋設物の種類確認
- 処分方法の選定
- 追加費用の見積もり
この3工程で2〜3日かかることもあります。
さらに、選別できない廃材混じりの土は受け入れ先が限られるため、費用が大きく跳ね上がります。
③ 悪天候
解体工事は雨でも基本的に止まりませんが、強風や台風、重機の安全性確保が難しい状況では作業が止まることがあります。
ただし、日常的な雨で工事が中断することはほとんどありません。
■ 工期が1ヶ月遅れた場合に発生する施主側の実質負担
「工事が遅れると新築の工程がずれる」
これだけに思われがちですが、実際には施主自身の生活コストに直撃します。
以下は現場で実際に起こった金額感を元にしたモデルケースです。
■ 工期1ヶ月遅延のモデルケース
| 項目 | 負担額 |
|---|---|
| 仮住まい延長 | +18万円 |
| 家財保管料 | +4万円 |
| つなぎ融資の利息 | +5万円 |
| 再手配費(職人・資材) | +10〜20万円 |
合計:37〜47万円
地方であれば多少抑えられますが、都市部では60万円を超えることもあります。
※この負担は、契約前の確認と工程設計でほぼ防げるケースが大半です。
このような負担は、工期遅延だけで終わりません。
契約書・工程設計・業者選びの甘さが重なることで、被害はさらに拡大します。
遅延は「ただの予定変更」ではなく、
施主の財布へ直撃する“追加コストであることを理解する必要があります。
■ 工期遅延を防ぐために、依頼前に確認すべき質問
① 職人確保について
質問例:
「職人が応援要請で抜けるケースがありますか?その場合の対策は?」
良い回答例:
「人員は複数確保し、余裕のある工程で組んでいます。予備日も含め管理しています。」
危険な回答例:
「まぁ現場次第ですね」「応援は仕方ないので…」
② 埋設物への対応
質問例:
「埋設物が出た場合、確認から処分決定までどのくらいかかりますか?」
良い回答:
「種類確認・見積り・処分依頼で1~2日いただきます。金額も明確にお伝えします。」
危険な回答:
「すぐ対応できますよ」「見てみないと分かりませんね」
③ 工期に対する余裕
質問例:
「遅延リスクを見込んだ予備日はどの程度入れていますか?」
良い回答:
「人材不足や確認作業を想定し、数日余裕を見て工程を組んでいます。」
工期遅延は、質問の仕方ひとつで回避率が大きく変わります。
より具体的な確認ポイントは、こちらで詳しく解説しています。
■ まとめ:工期遅延は“現場の問題”ではなく“施主の損失”になる
解体が遅れると、新築の着工スケジュールがずれるだけでなく、
仮住まい・保管料・つなぎ利息といった生活コストが確実に増えていきます。
特に
- 職人の確保
- 埋設物対応
- 工程の予備日
の3つは、業者によって大きく差が出ます。
依頼前にしっかり確認することで、工期遅延による負担を大きく減らすことができます。
工期遅延は「仕方ない現場トラブル」ではありません。
構造を理解し、事前に潰せば防げるリスクです。
工期・費用・契約・近隣対応まで含めた全体像は、
こちらで整理しています。
本記事は、解体現場に25年以上携わってきた筆者の経験に基づき、
一般的な判断材料としてまとめています。
この記事を書いた人
秋ちゃん
解体業に25年以上従事。
1級建設機械施工技士/建築物石綿含有建材調査士。
木造・RC・鉄骨解体、アスベスト除去(レベル1〜3)など、
現場責任者として多数の解体工事に携わる。
よくある質問
Q1. 解体工事って、どれくらいの確率で遅れるものなんですか?
A. 正直に言うと、遅れが一切出ない現場の方が少数です。
ただし「数日の調整で収まる遅れ」と、「生活コストに直撃する遅れ」は別物。
後者は、契約前の確認不足で起きるケースがほとんどです。
Q2. 雨が降ると工事は止まりますか?
A. 普通の雨では止まりません。
止まるのは、強風・台風・重機の安全確保ができない場合だけです。
「雨=遅延」と説明する業者は、正直ちょっと雑です。
Q3. 職人不足って、どの業者でも同じじゃないんですか?
A. 不足自体は業界全体の問題です。
ただし、
・自社職人を確保している
・応援前提でも予備日を組んでいる
この差で、止まるか・調整で済むかが分かれます。
Q4. 工期が遅れたら、解体業者が補償してくれるんですか?
A. 契約書に書いてなければ、基本的に補償されません。
仮住まい費・保管料・つなぎ利息は、施主負担になるケースが大半です。
だからこそ、遅延時の取り決めは契約前に確認が必須です。
Q5. 埋設物が出た場合、なぜそんなに時間がかかるんですか?
A.
・何が埋まっているかの確認
・処分方法の選定
・受け入れ先の調整
これを同時進行できないからです。
「すぐ片づけますよ」と言う業者ほど、後から揉めやすいです。
Q6. 工期遅延のリスクって、施主側で減らせますか?
A. 減らせます。
具体的には、
・職人確保の考え方
・埋設物が出た時の判断スピード
・予備日の有無
この3点を事前に質問するだけで、かなり変わります。
Q7. 「予定どおり終わります」と言い切る業者は信用していい?
A. 個人的には、警戒します。
現場を知っている業者ほど、「遅れる可能性」と「対策」をセットで説明します。
断言しかしないのは、リスクを施主に押し付ける前提のことが多いです。
Q8. 結局、施主が一番気をつけるべきポイントは?
A. これだけ覚えておいて。
工期遅延は、現場トラブルじゃない。
あなたの生活費が削られる問題。
そこを理解して質問できる施主は、まず大きく損しません。





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