解体工事の追加費用トラブル

解体工事トラブル回避
この記事は約6分で読めます。

※本記事は
「解体工事トラブル回避の全設計図(全10回シリーズ)」の第1回です。


◆「見積もりは安かったのに」の正体

解体工事で最も多い不満は、
「最初は安かったのに、結局高くなった」 というものです。

でも、これは騙されたわけでも、運が悪かったわけでもありません。

安さの正体を一言で言うと、これです。

見積もりが安いのは、企業努力ではなく
「不確定な追加費用を最初から入れていない」だけ。

この構造を知らずに契約すると、
業者からの請求がすべて「後出し」に見えてしまいます。

そして、
「自分だけ損をした気分」 になります。

この記事では、追加費用が生まれる仕組みと、
その金額を冷静にコントロールする方法を解説します。


この記事は、解体工事で起きるトラブル全体の中でも
「追加費用」に特化して深掘りしています。

👉 解体工事トラブル全体像と防ぎ方の設計図は、
【完全ガイド】解体工事トラブル回避の全設計図 を先にご覧ください。

1. 追加費用トラブルの正体は「想定外」ではない

1-1. 追加費用はこの3パターンしかない

解体現場で発生する追加費用は、実は限られています。

① 地中埋設物
ガラ、浄化槽、井戸、古い基礎など。

② 残置物・付帯物の見落とし
家財道具、見積もり時に見えていなかった塀・土間など。

③ 契約外作業
近隣配慮のための手壊し作業の増加、大幅な工程変更。

問題は、追加費用が起きることではありません。

これらが起きる前提で
「準備していないこと」がトラブルの原因です。


1-2. なぜ見積もり時に確定できないのか

地中は、掘ってみなければ分かりません。
建物の基礎下も、事前確認は不可能です。

解体工事は
「完成品を買う契約」ではなく、未知の領域を掘削する工事です。

この前提を知らないと、

  • 説明不足=悪意
  • 追加請求=ボッタクリ

と受け取ってしまい、感情的な対立が生まれます。


2. 施主がハマる「追加費用が暴走する思考」

2-1. 「全部込みだと思ってた」

解体工事に
「標準フルパック」は存在しません。

含まれる内容は、「業者ごと」「工事ごと」に違います。

特に要注意なのが、
見積書に出てくる 「一式」 という言葉。

「一式」は一番トラブルを呼ぶ表現です。


2-2. 「出たら相談してくれるはず」

現場は、止まると損失が出ます。

単価が未決定のまま
「出たので進めます」となると、

  • 業者の言い値になりやすい
  • 施主は後から知らされる
  • 感情がぶつかる

この時点で、関係は壊れます。


3. 防げるのは「発生」じゃない。「金額の暴走」

3-1. 契約書で必ず決めるべき【5項目】

守るべきなのは、工事内容ではありません。

金額の決定権です。

必ず契約前に、次を決めてください。

① 地中埋設物の処理単価
m³・tあたりの単価を明記。

② 事前説明+書面合意
追加作業は「勝手にやらない」。

③ 写真報告を必須条件にする
着工前写真+発生理由の説明がない作業は認めない。

④ 工事範囲の明確化
庭木・塀・土間など、どこまで含むか具体化。

⑤ 過去事例からの概算上限確認
「最大でどのくらい追加になるか」を事前に聞く。

これだけで、精神的な余裕が全然違います。


3-2. 単価が決まっている現場は平和

単価が決まっていれば、

  • 工事は止まらない
  • 施主が呼び出されない
  • 感情的な対立が起きない

現場的に言えば、

単価決定=トラブルへの保険

です。

※追加費用で揉める現場の多くは、
「金額」ではなく「決め方」が決まっていません。


4. 実例で見る「追加費用が増える瞬間」

4-1. ガラ処分費40万円増の落とし穴

処分単価は合意していた。

でも、運搬費が別項目だった。

★ 確認すべきは
「処分費に運搬費が含まれているか」

業者に悪意があるというより、
「説明したつもり」「聞いたつもり」のズレが原因です。


4-2. 付帯物の認識ズレ

「塀は含まれていると思った」
「いや、見積もり外です」

曖昧な表現を残すと、必ずここで揉めます。


5. 施主が今すぐ使えるチェックリスト

5-1. 見積もりで必ず見るべき点

  • 「別途」「現場判断」が多くないか
  • 単価と数量の根拠があるか
  • 運搬費の扱いが明確か

5-2. 契約前に必ず投げるべき一言

  • 「地中埋設物の単価を契約書に入れてください」
  • 「追加作業は写真と書面合意を条件にしてください」
  • 「過去事例から、最大の追加リスクはどれくらいですか?」

これを嫌がる業者は、後で揉めます。


まとめ|追加費用は事故じゃない。

追加費用は起きます。
でも、高額化は防げます。

防ぐ手段はこの3つだけ。

  • 単価
  • 写真
  • 契約書

知らない施主だけが損をする構造から、
ここで抜けてください。


本記事は、解体現場に25年以上携わってきた筆者の経験に基づき、
一般的な判断材料としてまとめています。

 この記事を書いた人

秋ちゃん
解体業に25年以上従事。
1級建設機械施工技士/建築物石綿含有建材調査士。
木造・RC・鉄骨解体、アスベスト除去(レベル1〜3)など、
現場責任者として多数の解体工事に携わる。

 ▶プロフィールはこちら

よくある質問(FAQ)

Q1. 追加費用が発生した場合、支払いを拒否できますか?

A.契約内容によります。

契約書に単価や追加作業のルールが明記されていない場合、金額や作業内容に納得できなければ即時支払い義務はありません
ただし、契約時に「別途協議」「現場判断」とだけ書かれている場合は、業者側が強く出てくるケースもあります。
そのため、契約前に単価・写真報告・書面合意を決めておくことが重要です。


Q2. 地中埋設物が出たら、必ず施主負担になりますか?

A.原則として施主負担になるケースが大半です。

地中埋設物は「新たに発生した産業廃棄物」ではなく、土地に元から存在していたものと扱われるためです。
ただし、処理単価や上限額を事前に決めていれば、金額のコントロールは可能です。


Q3. 「別途費用あり」と書いてある見積もりは危険ですか?

A.書き方次第です。

すべてが危険というわけではありませんが、

  • 単価の記載がない
  • 数量の想定がない
  • 写真報告や事前合意のルールがない

この3点が揃っていない「別途費用」は、後から揉める確率が非常に高いです。


Q4. 見積もりが一番安い業者を選ぶのはダメですか?

A.理由が説明できない安さは危険です。

安い理由が

  • 重機が入りやすい
  • 処分場が近い
  • 過去の実績が多い

など、構造的に説明できるなら問題ありません
逆に、「後で調整します」「やってみないと分からない」が多い業者は、追加費用トラブルの温床になります。


Q5. 追加費用の説明は、口頭だけでも問題ありませんか?

A.おすすめしません。

口頭説明は、後で必ず「言った・言わない」になります。
最低限、

  • 写真
  • 金額
  • 作業内容

この3点が書面(LINE・メールでも可)で残る形で合意してから進めるべきです。


Q6. 現場に立ち会えない場合、どうすればいいですか?

A.その場合こそ、契約時のルール決めが重要です。

  • 単価を事前確定
  • 写真報告を義務化
  • 電話 or 書面での承認フローを決める

これをやっておけば、立ち会えなくても工事は止まらず、金額も暴走しません


Q7. 良心的な業者なら、追加費用はサービスしてくれますか?

A.少額ならあります。

実際、ガラが少量・簡単な作業であれば、請求しない業者もいます。
ただし、それを最初から期待するのは危険です。
サービスは「結果」であって、「前提」にしてはいけません。


Q8. 追加費用トラブルを完全にゼロにすることはできますか?

A.できません。

解体工事は不確定要素がある工事です。
ただし、

  • 金額の上限
  • 判断のルール
  • 責任の所在

これを決めておけば、「揉めない」「精神的に削られない」状態は作れます。


最後に(読者への一言)

追加費用は「事故」ではありません。
管理されていないリスクが、あとから表に出てきているだけです。

この構造を理解して契約できれば、
解体工事は怖いものではなくなります。

👉 これらを一体で管理する考え方は、
【完全ガイド】解体工事トラブル回避の全設計図 にまとめています。

次回予告|近隣トラブルは「連鎖」する

追加費用で業者と揉める

現場の空気が悪くなる

近隣対応が雑になる

最悪の近隣トラブルへ

……これ、本当によくある流れ。

次回は
「施主が矢面に立たずに済む近隣トラブル対策」を
契約前の段階から解説します。

コメント