※本記事は
「解体工事トラブル回避の全設計図(全10回シリーズ)」の第8回です。
― 請求された“その瞬間”に、施主が取るべき5つの行動 ―
◆「追加で〇〇万円かかります」と言われた“その時”
解体工事で本当に警戒すべきなのは、請求額そのものではありません。
最も危険なのは、反射的に了承の意思を示してしまうことです。
「分かりました」
「仕方ないですね」
こうした一言や、異議を示さない態度は、現場や後日の説明において、
「黙示の了承」と解釈される余地があります。
その結果、
見積120万円 → 完了後180万円
という“取り返しのつかない状態”が完成します。
しかし安心してください。
実は多くの追加請求は、その場で踏みとどまり、コントロールすることが可能です。
この記事では、感情論や交渉術ではなく、不当なコスト増大を論理的に止める「管理技術」を解説します。
1|まず理解:追加請求=即支払義務ではない
業者がよく使う言葉に、次のようなものがあります。
- 「現場で予期せぬものが出たので当然です」
- 「この業界では皆さん払っています」
しかし、これらに法的な強制力はありません。
追加請求が「正当な支払義務」として成立するには、
次の4条件がすべて揃っている必要があります。
- 事前に想定し得なかった不可抗力であること
- 単価や算定根拠が事前に合意されていること
- 客観的証拠(写真・数量データ等)が存在すること
- 作業着手前に、説明と書面での承諾があること
★ これらが1つでも欠けていれば、即座の支払義務は発生しません。
さらに重要なのは、
「どの条件を満たしている請求なのか」を説明する義務は、業者側にあるという点です。
2|回避すべき「不用意な反応」と「正解の回答」
2-1. 権利を放棄する一言(言った瞬間、主導権を失う)
❌「じゃあ、それでお願いします」
❌「仕方ないですよね」
❌「後で詳しく確認します」
※作業続行を黙認したと解釈されるリスクあり
これらはすべて、事後承認・合意扱いに転用される可能性があります。
2-2. 主導権を握る“正解の一言”
✅
工事内容とその金額の理由を、写真や数量が分かる資料と一緒に書面で出してください。
それを契約内容と照らし合わせて確認し、対応を判断します。
この一言で、
- 根拠の薄い請求
- その場の空気で押し切る手法
は、ほぼ確実に止まります。
3|追加請求を適正化させる「5ステップ管理フロー」
STEP①|即答しない
現場の空気に流されず、判断を一度持ち帰る。
即答=合意と認識してください。
STEP②|証拠と「差分」の説明を求める
写真だけでなく、
- 当初見積の数量
- 何が、どれだけ、なぜ増えたのか
この差分の理由を説明させます。
STEP③|単価の合意箇所を特定する
「その単価は、契約書や見積書のどの項目に基づいていますか?」
👉 第7回で固めた数量×単価と照合します。
参考:第7回|解体業者の見積書
STEP④|契約書の変更条項を提示する
第6回で導入した、次の一文を使います。
「内容・金額の変更は、事前に書面で協議し、双方合意のうえで実施する」
👉 事前合意がない=プロセス違反です。
参考:第6回|解体工事の契約書
STEP⑤|支払いを「拒否」ではなく「留保」する
「払わない」ではありません。
「契約と整合性が取れるまで、支払いを留保します」
これは、法的にも正当な立場です。
※今すぐ支払う必要はありません。
この請求が、契約と条件に沿ったものかを一度整理・確認するだけでOKです。
4|「正当な追加」と「不当な請求」の境界線
✔ 承諾すべき追加請求
- 単価が事前合意済み
- 作業前に写真付き説明あり
- 書面で了承してから着手
✖ 拒絶すべき請求
- 作業完了後の事後報告
- 「一式」「現場判断」という根拠
- 合意のない高額単価
まとめ
追加請求は「運」ではなく「管理能力」
追加費用が発生する出来事そのものは、現場次第です。
しかし、それを
- 言いなりの損失にするか
- 予測可能なコストにするか
は、施主の管理能力で決まります。
第7回で
👉 リスクを顕在化させない設計を行い、
第8回で
👉 顕在化したリスクを制御する運用を行う。
これは交渉術ではありません。
第6回(契約書)・第7回(見積書)で作った設計を、
現場で実行するための「運用編」です。
ここまで読み切ったあなたは、
もはや業者の裁量に振り回される発注者ではないはずです。
この記事で扱った「追加請求への対処」は、
解体工事トラブル全体のほんの一部にすぎません。
追加費用・近隣・工期・事故・認識ズレ。
これらは必ず連鎖します。
個別対処ではなく、
最初から“揉めない構造”を作りたい方へ⇩
本記事は、解体現場に25年以上携わってきた筆者の経験に基づき、
一般的な判断材料としてまとめています。
この記事を書いた人
秋ちゃん
解体業に25年以上従事。
1級建設機械施工技士/建築物石綿含有建材調査士。
木造・RC・鉄骨解体、アスベスト除去(レベル1〜3)など、
現場責任者として多数の解体工事に携わる。
よくある質問(FAQ)
Q1. 「現場判断なので今すぐ決めてください」と言われたら?
A. 即答しない。
「書面で根拠をください。契約に基づいて判断します」で止める。
急がせる=根拠が弱いが現場の鉄則。
Q2. 追加請求を断ったら、工事を止められませんか?
A. 正当な理由なく止めると業者側の契約不履行。
「支払い拒否」ではなく「妥当性確認のための留保」と言えば問題なし。
Q3. 写真だけ送られてきたけど、払う必要ある?
A. 写真だけでは不十分。
数量・単価・差分説明が揃って初めて検討対象。
「写真=正当性」ではない。
Q4. 少額(数万円)なら払ったほうが早い?
A. その判断が次の10万・20万を呼ぶ。
金額の大小ではなく、ルールを通したかで判断する。
Q5. 契約書に「別途協議」とあれば何でも払う必要がある?
A. いいえ。
「事前に」「書面で」「合意」が揃わない限り、支払義務は成立しない。
Q6. 工事が終わってから追加請求されたら?
A. 原則アウト。
事後請求=不適正請求の可能性が高い。
第6回の契約条文をそのまま提示する。
Q7. 業者との関係が悪くなりそうで怖い…
A. 関係を壊しているのはルールを守らない請求。
淡々と契約ベースで対応する方が、結果的に揉めない。
Q8. 追加請求を完全になくすことはできる?
A. できない。
でも、
「予測不能な出費」を「管理可能なコスト」に変えることはできる。
それがこの記事の目的。







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