見積もりより危険なのは「契約書」
見積もりを何社も比べて、金額を下げて、やっと業者を決めた。
ここで気が抜けて契約書を流し読みした瞬間、すべて台無しになるケースは本当に多いです。
実際に、「見積もりは安かったのに、契約後に80万円以上の追加請求をされた」という相談は珍しくありません。
解体トラブルの大半は「工事中」ではなく、契約後に起きます。
そしてその瞬間に、「追加請求もトラブルも自己責任」という契約が完成します。
結論から言います。
契約書を読まない=リスクと責任を全部引き受ける行為。
これは大げさではありません。
ここが、あなたの財産を守る最後の防波堤です。
解体工事のトラブル全体像を先に押さえたい方は、
👉 【完全ガイド】解体工事トラブル回避の全設計図
を先に読んでおくと、この記事の理解が一段深くなります。
最低限チェックすべき条項はこの7つ
この7項目は、
「あとで確認する」では遅いポイントです。
契約書を開いたら、まずこの7項目が具体的に書かれているかだけ確認してください。
1つでも曖昧なら、その契約は普通に危険です。
- 工事範囲・工事内容
- 金額と支払い条件
- 追加費用(変更・追加工事)条項
- 地中埋設物の扱い
- 工期・遅延時の取り扱い
- 近隣トラブル・損害賠償(+連絡義務)
- 解約・中止時の条件
工事範囲・工事内容
見るべきポイント
「何が含まれていて、何が含まれていないか」が書いていない契約は、トラブルの原因になりやすいです。
- 建物本体のみか
- 基礎撤去は含むか
- 庭木・ブロック塀・物置は対象か
危険サイン
- 「解体工事一式」という表記のみ
◆ 含まれていると思い込んでいた作業が、あとから全部別料金になる典型パターンです。
※補足:現場とのコミュニケーションで防げるケースもあります
現場では、契約内容をきちんと理解したうえで、
作業員と適度にコミュニケーションが取れている施主の場合、
軽微な作業であれば追加料金なしで対応してくれるケースも実際にあります。
ただし、これは「当然やってもらえるもの」ではありません。
契約内容が明確で、現場との認識がズレていないからこそ、
業者側の判断で柔軟に対応できる余地が生まれるという話です。
◆ 逆に、契約が曖昧で現場との共有もできていないと、
小さな作業でもすべて「契約外=追加費用」になりやすくなります。
金額と支払い条件
チェック項目
- 総額(税込/税別)
- 支払いタイミング(着工前・完了後・分割)
注意点
解体工事は、本来「終わってから払う」のが普通です。
それなのに、着工前に全額支払いを求められると、
工事が止まった瞬間、施主は強く出られなくなります。
◆ お金を払った側ほど、立場が弱くなる。
これは解体に限らず、工事全般の現実です。
追加費用条項
解体で一番のトラブル原因がここ。
問題は「追加費用が出ること」ではなく、その金額が妥当か判断できないことです。
最低条件
- 追加費用は「事前説明+書面合意」が必要と明記されているか
ここが本命|単価の明記
地中埋設物(ガラ・コンクリート等)の処理単価が書かれているか確認してください。
- 例:〇〇円/㎥、〇〇円/t
よくあるトラブル例
「ガラが出ました。処分費30万円です」
→ 単価記載がないため、高いか安いか判断できず、ほぼ拒否不可。
◆ 単価がない=業者の言い値です。
※補足:現場では「立ち合い協議」という方法もあります。
実際の現場では、地中埋設物が出た時点で
業者と施主が現地で立ち合い、撤去方法と追加費用を協議して決める
という進め方をするケースもあります。
ただしこの方法には、現実的な問題があります。
・施主がすぐ現場に来られない
・判断が遅れて工事が止まる
・日程が延び、結果的に人件費が増える
こうなると、金額以前に工事全体が不安定になります。
だからこそ、契約時点で
「地中埋設物の処理単価(例:〇〇円/㎥)」を決めておくことが重要です。
事前に単価が決まっていれば、
出てきた量 × 単価=金額が即座に確定し、
立ち合いができなくても冷静に判断できます。
👉 単価確認は、トラブル回避だけでなく、工事を止めないための保険でもあります。
追加費用の考え方と単価設計については、
👉 第1回:解体工事の追加費用トラブルで、具体例付きで詳しく解説しています。
地中埋設物の扱い
前の章では「追加費用の決め方」を見ました。
その中でも、最も高額・かつ揉めやすいのが地中埋設物なので、ここで個別に切り出します。
出やすい現場
- 古い住宅、増改築を繰り返している建物
- 元が畑・池・田んぼだった土地
確認ポイント
「出たら別途協議」だけの契約は、
実際にいくらかかるのかを事前にまったく読めていない状態です。
なお、現場対応としては、
地中埋設物が出た時点で、施主と業者が立ち会って協議し、追加費用を決める
という方法も現実にはあります。
ただしこの場合、
・施主がすぐ現場に行けない
・判断に時間がかかる
・その間、工事が止まる
というリスクが避けられません。
◆ だからこそ、契約時点で単価が明記されている方が、
出た量 × 単価で金額が即決でき、
工事も止まらず、施主も安心なのです。
工期・遅延時の取り扱い
工期遅延は、仮住まい延長・売却遅れなど現金ダメージに直結します。
チェックポイント
着工日・完了予定日
遅延時の取り決め(業者側の責任)
解体工事では、契約時点で「着工日」と「完了(引き渡し)予定日」を明確にしておくべきです。
見積もり段階で工程に余裕を持って組むのが通常のため、
きちんとした業者であれば、大幅に遅れることはほとんどありません。
ただし、万が一業者側の都合で工期が遅れた場合、その責任の取り扱い(説明・協議・条件調整)がどうなるかを、あらかじめ契約書で確認しておくことが重要です。
◆ 遅延理由や状況によっては、
工事条件の見直しや、解体費用の調整が行われるケースもあります。
これが書いていなければ、遅れて困るのは施主だけという構造になります。
工期遅延がどれだけ金銭ダメージに直結するかは、
👉 第3回:解体工事の工期遅延で詳しく触れています。
近隣トラブル・損害賠償|+連絡義務
責任範囲の確認
- 騒音・粉塵・振動
- 隣家の塀・基礎・車の破損
これらが業者の賠償責任保険でカバーされるか必ず確認してください。
※解体工事の法的な発注者は施主です。
近隣から見れば、「業者の工事」ではなくあなたの工事として認識されます。
ただし、優良な解体業者であれば、近隣挨拶や日々の対応には特に注意を払い、いい加減な対応をすることはありません。
万が一、工事中に近隣の塀や設備などを破損してしまった場合でも、業者が主体となって迅速に対応し、
施主に余計な負担や迷惑がかからないよう処理するのが普通です。
◆ 逆に、トラブルが起きるたびに
「施主に確認してください」「施主から説明してください」
と責任を投げてくる業者は、対応力に問題があります。
近隣対応の質は、そのまま業者の質です。
超重要|連絡義務
「近隣からクレームや事故があった場合、速やかに施主へ報告する」
この一文があるか。
◆ 知らされないのが一番危険。
問題が大きくなってから初めて聞かされるパターン、普通にあります。
近隣対応を業者に任せる設計については、
👉 第2回:近隣トラブル対策で具体的に解説しています。
解約・中止時の条件
見るべき点
- 解約できるタイミング
- 違約金の計算方法(実費精算など)
解約・中止時の条件
解体工事の契約は、原則として解約やキャンセルは可能です。
ただし、いつ・どの段階で解約するかによって、扱いは大きく変わります。
契約締結直後や、工事が始まる前であれば、比較的スムーズに解約できるケースがほとんどです。
一方で、
・工事がすでに始まっている
・重機や人員の手配が完了している
こうしたタイミングでの解約は、
業者との話し合い(協議)が必要になります。
違約金が発生するかどうかは、契約書に定められた条件次第ですが、やむを得ない理由(資金計画の破綻、法的問題など)がある場合、必ずしも違約金を支払う必要がないケースもあります。
◆ 重要なのは、
- 「解約できるタイミング」
- 「違約金の計算方法(実費精算なのか、定額なのか)」
が契約書に明記されているかを、サイン前に確認することです。
まとめ|契約書は自己防衛の最終ライン
契約書は、業者を信じるための紙ではありません。
あなたのお金・財産・法的責任を守るための、最後の防波堤です。
読まずにハンコを押す=リスクと責任を丸呑み。
契約書を読むのは、細かい人間になるためじゃない。後悔しないための最低限の防御です。
契約書を読むかどうかで、解体は「普通の工事」にも「地獄」にも変わります。
※契約書だけ読んでも、トラブルは防げません。
見積・契約・現場の流れを一気に整理したい方は、
👉 【完全ガイド】解体工事トラブル回避の全設計図を必ず一度通してください。
本記事は、解体現場に25年以上携わってきた筆者の経験に基づき、
一般的な判断材料としてまとめています。
この記事を書いた人
秋ちゃん
解体業に25年以上従事。
1級建設機械施工技士/建築物石綿含有建材調査士。
木造・RC・鉄骨解体、アスベスト除去(レベル1〜3)など、
現場責任者として多数の解体工事に携わる。
よくある質問(FAQ)
Q1. 契約書って素人が読んでも意味ありますか?
A.あります。
法律を理解する必要はありません。「曖昧な表現がないか」を見るだけで十分です。
Q2. 契約書の修正をお願いすると嫌がられませんか?
A.嫌がる業者ほど危険です。
修正や説明を嫌がるのは、突っ込まれると困るからです。
Q3. 地中埋設物の費用は必ず払わないとダメ?
A.原則は施主負担です。
ただし、単価・上限・事前合意があれば暴走は防げます。
Q4. 契約後でもキャンセルできますか?
A.可能ですが、契約書の解約条項次第です。
だからこそサイン前に確認が必須です。
Q5. 契約書が難しすぎて理解できません。
A.理解できない契約にサインしないでください。
その時点でリスクです。
説明を求めて、答えられない業者は切ってOK。






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