◆ 記事の要約
隣の空き家が何年も放置されている。
屋根や外壁も傷んでいて、
こちら側へ倒れてこないか心配。
ところが、
いざ何とかしてもらおうと思っても、
- そもそも誰の家なのか分からない
- 登記上の所有者は、すでに亡くなっているらしい
- 役所へ相談したけれど、持ち主と連絡がつかない
こんなケースがあります。
所有者が分からなければ、
「どうしようもないのでは?」
と思ってしまうかもしれません。
でも、
そこで諦める必要はありません。
結論から言うと、
隣の空き家の所有者は、
登記事項証明書(いわゆる登記簿謄本)から、
確認できる場合があります。
ただし、
登記名義人が亡くなっていたり、
住所が古かったりして、
現在連絡できる所有者までたどれないこともあります。
そして大切なのは、
近隣住民が自分で、
相続人まで探し回る必要はない
ということです。
特に建物が傾いている、
瓦が落ちそうなど危険な状態なら、
所有者探しと並行して、
自治体へ相談してください。
この記事では、
- 隣の空き家の所有者を自分で確認する方法
- 地番が分からない場合の調べ方
- 登記上の所有者が亡くなっている場合
- 自治体が所有者を調査する方法
- 最後まで所有者が分からない場合の行政対応
- 所有者不明でも勝手にやってはいけないこと
について、
わかりやすく説明します。
隣の空き家の所有者が分からないとき、まずどうする?

まず覚えておいてほしいのは、
危険な状態なら、
所有者が分かるまで待つ必要はない
ということです。
例えば、
- 建物が自宅や道路側へ傾いている
- 瓦が今にも落ちそう
- 外壁が剥がれている
- 屋根の一部が崩れている
- 強風が吹くたびに部材が飛んできそう
このような状態なら、
市区町村の空き家担当窓口へ相談してください。
所有者が分からないので、
相談できないと思う必要はありません。
「隣の空き家の所有者は分かりませんが、
建物がこちらへ傾いていて危険です」
と、
分かる範囲で伝えれば大丈夫です。
写真を安全な場所から撮れるのであれば、
建物の状態や、
自宅との位置関係が分かる写真も用意しておくと、
状況を伝えやすくなります。
危険な空き家を見つけたときの、
具体的な通報方法については、
こちらで詳しく説明しています。
▶ 隣の空き家が崩れそう・危険な時の通報手順|役所の相談先と正しい対処法
自分で所有者を調べるなら登記事項証明書を確認する
役所へ相談する前に、
自分でも所有者を確認してみたいという方もいるでしょう。
その場合、
最初の手掛かりになるのが、
登記事項証明書
です。
以前は「登記簿謄本」と呼ばれることが多かったため、
今でもこの呼び方をする方は少なくありません。
登記事項証明書は他人でも取得できる
不動産の登記事項証明書には、
所有権の登記名義人の、
氏名や住所などが記録されています。
そして、
不動産の登記事項証明書は、
その家の所有者本人でなくても請求できます。
法務局の窓口だけでなく、
オンラインで交付請求することも可能です。
つまり、
隣の空き家が、
登記上は誰の名義になっているのか
を確認することはできます。
ただし、
ここで一つ注意があります。
登記に名前が載っている人が、
必ずしも現在連絡できる所有者とは限りません。
この点は後ほど説明します。
住所と地番は同じとは限らない
初めて登記事項証明書を取ろうとした方が、
意外につまずきやすいのがここです。
普段使っている住所と、
不動産登記で使われる地番は同じとは限りません。
例えば、
隣の空き家の住所は分かる。
でも地番を聞かれても分からない。
ということがあります。
そんなときは、
ブルーマップなどの地図資料や、
公図などを手掛かりに、
地番を確認する方法があります。
ただ、
無理に自分だけで調べようとしなくても大丈夫です。
管轄の法務局へ
「隣の空き家の登記事項証明書を取りたいのですが、
地番が分かりません」
と相談して、
地番を確認する方法を案内してもらうのが分かりやすいです。
法務局によっては、
手続案内が予約制の場合もあるため、
事前に確認しておくと安心です。
法務省も登記手続について、
法務局の手続案内を用意しています。
ここで重要なのは、
住所しか分からないから調べられないと諦めないことです。
登記を見ても現在の所有者が分からないことも
登記事項証明書を取得して、
これで持ち主が分かったと思っても、
そこで終わらないケースがあります。
古い空き家では、
- 登記名義人がすでに亡くなっている
- 登記に記載された住所から転居している
- 相続登記がされていない
- 相続人が複数いる
- 相続関係が複雑になっている
といったことがあるからです。
そのため、
登記事項証明書は有力な手掛かりですが、
今連絡できる所有者が、
必ず分かるものではありません。
特に、
何十年も前から放置されている空き家では注意が必要です。
相続登記だけでなく住所変更登記も義務化された
所有者不明の土地や建物を減らすため、
登記制度も変わっています。
相続登記は、
2024年4月1日から義務化されています。
さらに、
2026年4月1日からは、
住所・氏名等の変更登記も義務化されました。
不動産の所有者は、
住所や氏名などに変更があった場合、
原則として変更日から2年以内に、
変更登記をする必要があります。
▶ 法務省
ただし、
義務化されたから
空き家の登記情報は全部最新になっている
というわけではありません。
2026年4月1日より前に住所等が変わっていて、
まだ変更登記されていない場合には、
原則として2028年3月31日までの猶予があります。
そのため、
現在でも古い住所が記載された登記に出会うことはあり得ます。
登記上の所有者が亡くなっていたらどうする?
登記を調べてみたら、
所有者として載っている人が、
もう亡くなっていた
ということもあります。
でも、
所有者が亡くなったからといって、
誰のものでもない空き家になったわけではありません。
相続が発生していれば、
相続人を確認していく必要があります。
問題は、ここからです。
相続人が一人とは限りません。
長期間にわたって相続登記がされていなければ、
さらに次の相続が発生していることもあります。
そうなると、
近隣住民が自分で戸籍を追いかけて、
「子どもは誰?」
「孫はどこに住んでいる?」
と探していくのは、
現実的ではありません。
そこまで近隣住民だけで背負う必要はありません。
危険な空き家なら、
分かった情報を自治体へ伝えて相談してください。
相続した空き家を、
放置するとどうなるのかについては、
こちらでも詳しく説明しています。
【PR】相続した空き家を所有している方へ
この記事を読んでいる方の中には、
親や祖父母の空き家を相続したものの、
そのままになっているという方もいるかもしれません。
空き家は、
使う予定がなくても、
所有している限り管理が必要です。
建物の傷みが進んでいる場合は、
修繕して残すだけでなく、
売却や解体を検討した方がいいケースもあります。
ただ、
いきなり解体を決める必要はありません。
まずは、
解体するとしたらどのくらい費用がかかるのかを確認してから、
残す・売る・解体するを考えるのも一つの方法です。
自治体は空き家の所有者をどうやって調べる?
自治体は、
一般の近隣住民には確認できない情報も含め、
法令に基づいて、
所有者等を調査できる場合があります。
所有者探索では、
- 不動産登記情報
- 固定資産税の課税情報
- 住民票
- 戸籍
などが手掛かりになります。
国土交通省の調査でも、
空家法に基づいて、
内部利用できる固定資産税の課税情報は、
自治体による所有者探索で、
利用実績の高い情報とされています。
登記が古くても固定資産税の情報が手掛かりになることも
例えば登記が、
昔の所有者名義のままでも、
自治体側では、
固定資産税の課税情報などが、
所有者等を調べる手掛かりになることがあります。
国土交通省も、
空き家所有者の特定に活用される情報として、
- 固定資産税課税情報
- 不動産登記情報
- 住民票記載情報
- 死亡届
などを挙げています。
ただし、
役所が把握している所有者の、
住所や電話番号を、
近隣住民へそのまま教えてくれるという意味ではありません。
ここは別の話です。
だからこそ、
自分で登記を調べても分からなかったからといって、
誰にも分からないと諦めないでください。
危険な空き家なら、
自治体へ相談する意味は十分にあります。
自治体へ通報したあと、
どのような流れで調査や指導が進むのかは、
こちらで詳しく説明しています。
▶ 特定空家・管理不全空家に指定されるとどうなる?近隣住民の通報から行政が動くまでの全手順
最後まで所有者が分からなかったら?
自治体が調査しても、
所有者等を確認できなかったら、
危険な空き家はそのまま放置されるのでしょうか。
必ずしもそうではありません。
危険な特定空家等について、
必要な調査をしても、
措置を命じるべき所有者等を確知できない場合には、
一定の要件のもとで市町村が、
略式代執行によって除却などを行える制度があります。
つまり、
所有者不明
=
危険な空き家を永久に放置するしかない
というわけではありません。
もちろん、
所有者が分からない空き家なら、
何でも行政が解体してくれるわけではありません。
建物の状態や、
周囲への危険性などを踏まえ、
法律に基づいて行政が判断します。
行政が空き家に対してどのように動くのかは、
こちらの記事も参考にしてください。
▶ 行政代執行とは?強制解体の流れと費用・差し押さえのリスクを解説
所有者不明の空き家から枝が越境してきたら?
古い空き家では建物だけでなく、
庭木も放置されていることがあります。
隣の空き家から伸びた枝が、
自宅の敷地まで入ってきているというケースです。
2023年4月施行の改正民法では、
竹木の所有者に、
枝を切除するよう催告したのに、
相当期間内に切除しない場合のほか、
竹木の所有者を知ることができない、
またはその所在を知ることができない場合などには、
越境された土地の所有者が、
枝を自ら切り取れる仕組みがあります。
ただし、
隣が空き家だから、
伸びてきた枝はすぐ自由に切っていい
という話ではありません。
切除にかかった費用は、
基本的には、
竹木の所有者へ請求できると考えられていますが、
所有者そのものが分からなければ、
実際に誰へ請求するのかという問題が残ります。
そのため、
所有者不明の空き家では、
いきなり費用をかけて対応する前に、
まず自治体の空き家担当窓口へ相談しておくと安心です。
越境した枝や根については、
こちらで詳しく説明しています。
所有者が分からなくても勝手に敷地へ入ってはいけない
所有者が分からないからといって、
誰のものか分からないなら、
敷地へ入ってもいい
とはなりません。
例えば、
- 勝手に敷地へ入る
- 落ちそうな瓦を外す
- 外壁を取り外す
- 柱を支えたり動かしたりする
- 建物の一部を壊す
- 自分の判断だけで解体業者を呼ぶ
こうしたことは避けてください。
老朽化した建物は、
見た目以上に不安定になっていることがあります。
柱一本、
壁一枚でも、
建物全体のバランスに関係していることがあります。
「危なそうだから少し直しておこう」
という善意でも、
触ったことで一部が崩れれば非常に危険です。
法律上の問題だけではありません。
所有者が分からないときほど、
自分で何とかしようとせず、
安全な場所から状態を確認して行政へ相談する。
これが基本です。
所有者不明・連絡がつかないときの相談先
「結局、どこへ相談すればいいの?」
という方は、
まず次のように考えてください。
- 危険な空き家について相談したい
→ 市区町村の空き家担当窓口 - 登記上の名義人を確認したい
→ 法務局 - 所有者・相続人との法的な問題になっている
→ 弁護士や司法書士などの専門家
また、
- 今にも建物が道路へ倒れそう
- 瓦や外壁が落下して人に当たりそう
など、
人命に関わるほど切迫した状況なら、
状態に応じて、
警察や消防への連絡も考えてください。
通常の空き家相談と、
目の前に迫っている危険への対応は、
分けて考えることが大切です。
まとめ
隣の空き家の所有者が分からない場合、
まず登記事項証明書から、
登記名義人を確認する方法があります。
住所しか分からない場合でも、
地番を確認する方法はあります。
ただし、
登記を取れば、
必ず現在の所有者へ連絡できるわけではありません。
名義人が亡くなっていたり、
登記上の住所が古かったり、
相続関係が複雑になっていることもあります。
そこで行き詰まったからといって、
近隣住民が、
相続人まで探し回る必要はありません。
特に建物が傾いている、
瓦が落ちそうなど危険な状態なら、
自治体へ相談してください。
自治体には、
固定資産税の課税情報なども含め、
法律に基づいて所有者等を調査する仕組みがあります。
それでも所有者等を確認できない危険な空き家については、
一定の要件のもとで、
財産管理制度や、
略式代執行などが利用される場合もあります。
大切なのは、
持ち主が分からないから仕方ないと、
そのままにしないことです。
自分でできる範囲を超えたら行政へ。
それだけでも、
危険な空き家を動かすための大切な一歩になります。
本記事は、
解体現場に25年以上携わってきた筆者の経験に基づき、
一般的な判断材料としてまとめています。
この記事を書いた人
秋ちゃん
解体業に25年以上従事。
1級建設機械施工技士/建築物石綿含有建材調査士。
木造・RC・鉄骨解体、アスベスト除去(レベル1〜3)など、
現場責任者として多数の解体工事に携わる。
よくある質問(FAQ)
Q1.隣の空き家の所有者は自分で調べられますか?
A. はい。
法務局で、
土地や建物の登記事項証明書を取得すれば、
登記上の所有者の、
氏名や住所などを確認できます。
ただし、
登記情報が古い場合もあるため、
現在連絡できる所有者まで分かるとは限りません。
Q2.住所しか分からなくても登記事項証明書を取得できますか?
A. 登記事項証明書を請求するには、不動産を特定する必要があります。
住所と登記上の地番は異なる場合があるため、
地番が分からない場合は、
ブルーマップなどの資料を利用したり、
管轄の法務局へ確認方法を相談したりするといいでしょう。
Q3.登記上の所有者が亡くなっていたらどうすればいいですか?
A. 所有者が亡くなっていても、誰のものでもない空き家になったわけではありません。
相続人の確認が必要になる場合があります。
ただし、
危険な空き家について近隣住民が、
自分で相続人を探し回る必要はありません。
分かった範囲の情報と、
空き家の状態を、
自治体へ伝えて相談してください。
Q4.所有者が分からなくても役所へ通報できますか?
A. はい、通報・相談できます。
所有者の名前や連絡先が分からなくても、
隣家の住所や場所、
自宅との位置関係、
どのような危険があるのかを伝えてください。
安全な場所から撮影できるのであれば、
写真があると状況を説明しやすくなります。
所有者が分からないから相談できないと考える必要はありません。
Q5.所有者不明の空き家を行政が解体することはありますか?
A. あります。
特定空家等について必要な調査をしても、
所有者等を確知できない場合には、
一定の要件を満たせば、
市町村が略式代執行によって除却などを行うことがあります。
ただし、
所有者不明だから自動的に行政が解体するわけではありません。
Q6.所有者が分からなければ敷地へ入ってもいいですか?
A. 勝手に入るのは避けてください。
所有者が分からなくても、
自由に立ち入っていい土地になるわけではありません。
また、老朽化した空き家は倒壊や落下物の危険があります。
建物や敷地にはできるだけ近づかず、
危険な状態なら自治体へ相談してください。
解体費用・手続き・税金・業者選び・近隣トラブルなど、
解体工事でよくある疑問は、
Q&A形式で分かりやすくまとめています。
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