隣の空き家が長年放置され、
屋根や外壁が崩れそうになっている。
ところが、
「所有者が誰なのか分からない」
「持ち主は亡くなっていて、相続人も分からない」
そんなケースがあります。
役所に相談したところ、
略式代執行(りゃくしきだいしっこう)
という言葉を聞いた方もいるかもしれません。
行政代執行と似ていますが、
実は違う制度です。
ここでは、
- 略式代執行と行政代執行の違い
- 略式代執行が行われる条件と手続き
- 解体費用は誰が負担するのか
- 解体後の土地はどうなるのか
について、
分かりやすく説明します。
結論
略式代執行とは、
必要な調査を行っても、
措置を命じる相手を特定できない場合に、
自治体が法律に基づいて、
必要な措置を行う制度です。
例えば、
所有者が分からない危険な空き家について、
自治体が、
一定の手続きを経て解体などを行う場合があります。
ただし、
所有者が分からないからといって、
必ず解体してもらえるわけではありません。
空家等対策特別措置法(空家法)では、
特定空家等に対する措置として、
略式代執行が定められています。
建物の危険性や、
所有者の調査状況などを確認し、
法律上の条件を満たす場合に実施されます。
また、必要な措置は、
建物全体の解体とは限らず、
危険な部分の除去などが行われる場合もあります。
略式代執行と行政代執行の違い
この2つの大きな違いは、
措置を命じる相手が分かっているかどうか
です。
| 比較項目 | 行政代執行 | 略式代執行 |
|---|---|---|
| 命令する相手 | 特定できる | 必要な調査をしても特定できない |
| 事前の命令 | 原則として必要 | 相手を特定できないため命令できない |
| 主な手続き | 指導・勧告・命令など | 所有者等の調査・公告など |
| 行われる措置 | 解体・危険部分の除去など | 解体・危険部分の除去など |
| 費用負担 | 原則として義務者 | 原則として命令対象者 |
通常の行政代執行は、
所有者などに、
必要な措置を命じても実行されない場合に、
行政が代わりに行う仕組みです。
一方、略式代執行は、
命令する相手を特定できない場合に使われます。
つまり、
「略式」という名前だから、
簡単に解体できる制度ではありません。
どんな空き家が略式代執行の対象になる?
ここで重要になるのが、
過失なく確知することができない
という法律上の言葉です。
簡単に言えば、
自治体が必要な調査を尽くしても、
措置を命じる相手を特定できないこと
を意味します。
自治体は状況に応じて、
- 不動産の登記情報
- 住民票や戸籍、戸籍の附票
- 固定資産税に関する情報
- 相続関係や関係者への照会
などを調べます。
そのため、
「電話に出ない」
「近所の人が所有者を知らない」
というだけで、
すぐに略式代執行になるわけではありません。
また、
相続人が何人もいて、
話し合いがまとまらない場合でも、
それだけで対象になるとは限りません。
命令する相手を特定できる場合には、
通常の行政代執行などの手続きが検討されます。
略式代執行はどのような流れで行われる?
一般的には次のような流れで進められます。
- 空き家の状態を確認する
自治体が、
建物の危険性や周辺への影響を調べます。 - 所有者などを調査する
登記や戸籍などを確認し、
措置を命じる相手を探します。 - 略式代執行の必要性を判断する
特定空家等に対する措置として、
法律上の条件を満たしているか確認します。 - 事前に公告する
必要な措置や期限などを公表します。 - 自治体が必要な措置を行う
期限までに措置が行われなければ、
解体などを実施します。
公告は何のために行うの?
略式代執行では、
命令する相手を特定できません。
そのため、自治体は、
公告という方法で必要な措置や期限を知らせます。
自治体の掲示場やホームページなどで公表される場合があります。
これは、
所有者などに、
自ら対応する機会を与えるための大切な手続きです。
公告には相当の期限を定める必要がありますが、
全国一律で期限が決まっているわけではありません。
略式代執行も、
必要な調査や手続きを経て行われるのです。
略式代執行の解体費用は誰が払う?
気になるのが解体費用の負担です。
結論から言うと、
所有者が分からないからといって、
解体費用が無料になるわけではありません。
自治体がいったん費用を支出して解体する場合でも、
法律には費用を徴収する仕組みがあります。
2023年の空家法改正では、
略式代執行の費用についても、
行政代執行法の費用徴収に関する規定が準用されるようになりました。
これにより、
法律上の条件を満たせば、
国税滞納処分の例による、
強制徴収も可能になっています。
土地を差し押さえて売却することもある?
場合によってはあります。
費用を負担すべき人が判明し、
徴収の条件を満たしている場合には、
財産を差し押さえ、
公売などによって費用を回収することがあります。
その財産に土地が含まれる可能性もあります。
ただし、
略式代執行で解体した土地が、
必ず差し押さえられて売却されるわけではありません。
所有者などが判明せず、
費用回収が難しいケースもあります。
危険な空き家を放置すると、
解体費用だけでなく、
周囲への損害や、
管理上の問題につながることもあります。
略式代執行で解体したあとの土地はどうなる?
略式代執行で建物が解体されても、
土地が自動的に自治体の所有物になるわけではありません。
略式代執行は、
危険な空き家に対して必要な措置を行う制度です。
土地の所有権を、
自治体へ移す制度ではありません。
そのため、
解体後も原則として土地の所有権は、
従前の所有者などに残ります。
また、建物がなくなっても、
- 雑草が伸びる
- ごみが不法投棄される
- 土地の管理者と連絡が取れない
といった問題が残る可能性があります。
建物が解体されたからといって、
土地の管理問題まで解決するとは限らないのです。
略式代執行と緊急代執行は何が違う?
似た制度に「緊急代執行」もあります。
違いは次のとおりです。
◆ 略式代執行
必要な調査をしても、
措置を命じる相手を特定できない場合に行われるもの。
◆ 緊急代執行
災害など非常の場合に、
命令などの手続きを待つ時間がないほど、
緊急性が高いときに行われるもの。
緊急代執行は、
2023年の空家法改正で創設されました。
つまり、
「略式=緊急」
という意味ではありません。
それぞれ目的や法律上の条件が異なります。
隣の空き家が危険な場合、略式代執行をお願いできる?
隣の空き家が崩れそうな場合、
自治体へ相談することはできます。
ただし、
相談すれば必ず略式代執行を実施してもらえるわけではありません。
実施するかどうかは、
自治体が法律上の条件を確認して判断します。
相談するときは、
- 空き家の所在地
- 屋根や外壁の落下、建物の傾きなど
- いつ頃から危険な状態なのか
- 所有者が分からない、連絡が取れないなどの事情
- 安全な場所から撮影した写真
を整理しておくと、
状況を伝えやすくなります。
所有者が分からないからといって、
危険な状態を我慢し続ける必要はありません。
まずは自治体の、
空き家担当窓口に相談してみましょう。
▶ 隣の空き家の所有者が分からない・連絡がつかない時はどうする?
よくある勘違い
- 所有者が不明なら必ず解体してもらえる
建物の状態や、
法律上の条件を踏まえて判断されます。 - 相続人が多ければ略式代執行になる
相続人が多いことと、
命令する相手を特定できないことは別です。 - 略式代執行なら公告なしで解体できる
空家法に基づく略式代執行では、
事前公告などの手続きが必要です。 - 解体費用はすべて税金で負担される
費用を負担すべき相手から徴収する仕組みがあります。 - 解体後の土地は役所のものになる
解体しただけで、
土地の所有権が自治体へ移るわけではありません。
所有者や近隣住民がやること
所有者・相続人の場合
危険な空き家を所有している場合は、
- 自治体からの通知や問い合わせを放置しない
- 建物の危険な状態を早めに改善する
- 必要に応じて修繕や解体を検討する
近隣住民の場合
隣の空き家が危険な場合は、
- 危険な建物に無断で立ち入らない
- 建物の状態を写真などで記録する
- 自治体の空き家担当窓口へ相談する
倒壊や落下物など、
差し迫った危険がある場合は、
消防など適切な機関への連絡も必要です。
行政による解体を待つ前に、
自分たちで対応できる場合は、
早めに解体費用を確認しておくことも大切です。
解体費用は、
建物の状態や工事条件によって異なるため、
まずは複数の業者から見積もりを取り、
費用や工事内容を比較してみましょう。
まとめ
略式代執行とは、
必要な調査をしても、
措置を命じる相手を特定できない場合に、
自治体が法律に基づいて必要な措置を行う制度です。
通常の行政代執行との大きな違いは、
命令する相手を、
特定できるかどうかにあります。
また、
- 略式代執行でも公告などの手続きが必要
- 解体費用を徴収する仕組みがある
- 解体しても土地が自動的に自治体のものになるわけではない
という点も覚えておきましょう。
「所有者が分からないから、何もできない」
と諦める必要はありません。
ただし、略式代執行は、
自治体が、
法律上の条件を確認して実施する制度です。
危険な空き家に困っている場合は、
まず自治体の担当窓口へ相談することから始めましょう。
※ 自分で空き家の解体を検討している方は、
業者選びや、
見積もりの比較方法も確認しておきましょう。
解体工事に関する疑問や不安は、
Q&A形式で分かりやすくまとめています。
費用・手続き・税金・業者選びなど、
気になるテーマは以下の一覧ページからご覧いただけます。
スポンサーリンク






コメント