特定空家・管理不全空家に指定されるとどうなる?近隣住民の通報から行政が動くまでの全手順

解体工事トラブル回避
この記事は約11分で読めます。

◆ 記事の要約

  • 隣の空き家が傾いていて危ない。
  • 瓦も落ちそうだったので、
    役所へ通報した。

でも、
そのあと行政は何をしてくれるのでしょうか。

「役所の人は見に来てくれる?」
「特定空家になったら、すぐ解体される?」
「所有者が分からなくても行政は動ける?」

このような疑問を持つ方も多いと思います。

結論から言うと、

役所へ通報したからといって、
すぐに行政が空き家を解体するわけではありません。

自治体は必要に応じて、
建物の状態や所有者などを調べ、

「管理不全空家等」
「特定空家等」

に該当するかを判断します。

そのうえで所有者に改善を求め、
それでも改善されない場合には、
勧告や命令、
最終的には、
行政代執行による除却などへ進むことがあります。

2023年12月に施行された改正空家法では、
「管理不全空家等」の制度や、
緊急代執行なども新たに設けられました。

この記事では、

  • 管理不全空家と特定空家の違い
  • 役所へ通報したあとの流れ
  • 指導・勧告・命令を受けるとどうなるのか
  • 行政代執行・略式代執行・緊急代執行の違い
  • 所有者が分からない空き家への行政の対応
  • 役所へ相談してもすぐ状況が変わらない理由
  • 危険な空き家に対して近隣住民ができること・やってはいけないこと

を順番に分かりやすく説明します。

まだ役所へ相談していない方は、
こちらの記事も参考にしてください。

▶ 隣の空き家が崩れそう・危険な時の通報手順|役所の相談先と正しい対処法


管理不全空家と特定空家の違い

この2つの違いを、
簡単に整理しておきましょう。

管理不全空家とは?

管理不全空家等とは、

適切に管理されておらず、
このまま放置すれば、
特定空家等になるおそれがある空き家

です。

例えば、
屋根や外壁が傷んでいる、
草木が繁茂しているなど、
管理状態が悪くなっている空き家が考えられます。

2023年の法改正によって、
周囲への悪影響が深刻になる前の段階から、
市町村が指導・勧告できるようになりました。

▶ 国土交通省

特定空家とは?

特定空家等は、

  • 倒壊など保安上危険となるおそれがある
  • 衛生上著しく有害となるおそれがある
  • 著しく景観を損なっている
  • 周辺の生活環境を守るため放置することが不適切

と認められる空き家などです。

イメージとしては、

管理不全空家
=
このまま放置すると、
問題が深刻になるおそれがある段階

特定空家
=
周辺への悪影響が、
より深刻になっている段階

と考えると分かりやすいでしょう。

ただし、
すべての空き家が必ず、
管理不全空家→特定空家、
という順番を通るわけではありません。

詳しい違いはこちらで説明しています。

▶ 「特定空家」「管理不全空家」とは?指定されるとどうなる?


近隣住民が役所へ通報すると、どうなる?

一般的には、
次のような流れで対応が進みます。

近隣住民から相談・通報
↓
自治体が相談内容を確認
↓
必要に応じて現地調査
↓
所有者などを調査
↓
建物の状態や周辺への影響を確認
↓
管理不全空家等・特定空家等に該当するか判断
↓
所有者へ改善を求める
↓
改善されなければ、より強い措置へ

国土交通省の資料では、

  • 管理不全空家等には
    「指導・勧告」
  • 特定空家等には
    「助言・指導・勧告・命令・代執行」

といった措置が設けられています。

ただし、
実際の調査方法や、
対応にかかる時間は、
自治体や建物の状態によって異なります。

▶ 行政代執行とは?


通報したら役所の人は現地を見に来る?

通報を受けた自治体は、
必要に応じて現地の状況を確認します。

ただし、

近所の人から危険だと言われた
=
すぐ特定空家

ではありません。

行政側でも、
建物の状態や、
周囲への影響などを確認して判断します。

そのため役所へ相談するときは、

「古い空き家なので怖いです」

だけではなく、

「建物が自宅側へ傾いています」
「昨日、瓦が道路へ落ちました」
「外壁の一部が剥がれそうです」

など、
具体的に伝えることが大切です。

写真が撮れる場合も、
隣の敷地へ入らず、
安全な場所から撮影してください。


空き家の所有者はどうやって調べる?

隣の空き家の所有者が分からないと、

「持ち主が分からないなら、
役所も何もできないのでは?」

と思うかもしれません。

しかし、
近隣住民が自分で相続人を探し回る必要はありません。

市町村には、
空家法に基づいて、
所有者等を把握するための仕組みがあります。

改正空家法では、
市町村が電力会社などに、
所有者情報の提供を求められることも明確化されました。

また、

  • 所有者が亡くなっている
  • 相続人が分からない
  • 相続放棄されている

といったケースでは、
状況に応じて、
市町村長が裁判所に、
財産管理人等の選任を請求できる仕組みもあります。

▶ 国土交通省

所有者が分からない
=
永久に放置するしかない

というわけではありません。

空き家では、
所有者が亡くなったあとも名義変更されず、
登記上の名義が、
祖父や親のまま残っているケースもあります。

相続した空き家を、
どうすればいいのか分からない方は、
こちらの記事も参考にしてください。

▶ 相続した空き家はどうする?


管理不全空家に指定されるとどうなる?

管理不全空家等になったからといって、
いきなり行政が解体するわけではありません。

まずは所有者への指導

市町村は所有者に対して、

「適切に管理してください」

と必要な改善を求めます。

この段階で修繕や管理を行い、
状態が改善すれば、
特定空家等になることを防げる可能性があります。

改善されなければ勧告

指導を受けても改善されず、
そのまま放置すれば、
特定空家等になるおそれが大きい場合には、
勧告へ進むことがあります。

ここで、
所有者にとって大きな問題になるのが、
固定資産税等の住宅用地特例です。

住宅が建っている土地は、
小規模住宅用地(200㎡以下の部分)なら、
固定資産税の課税標準が、
1/6になる特例があります。

しかし、
管理不全空家等として勧告を受けると、
その敷地は住宅用地特例の対象から外れます。

▶ 国土交通省

つまり、

土地の固定資産税負担が、
大きく増える可能性があります。

ただし、
税額が必ず6倍になるという意味ではありません。

1/6になるのは課税標準であり、
実際の税額には、
負担調整措置なども関係するためです。

住宅用地特例については、
こちらで詳しく説明しています。

▶ 住宅用地特例とは?空き家を解体すると固定資産税はどうなる?


特定空家に指定されるとどうなる?

特定空家等については、
状態に応じて、
より強い措置が取られることがあります。

基本的な流れは、

助言・指導
↓
勧告
↓
命令
↓
一定の場合には行政代執行

です。

勧告を受ければ、
特定空家等でも、
住宅用地特例の対象から外れます。

さらに必要な措置を命じられ、
その命令にも従わない場合には、
50万円以下の過料の対象になることがあります。

そして一定の要件を満たせば、
市町村が、
所有者に代わって除却などを行う、
行政代執行へ進む場合があります。

ここで勘違いしてはいけないのが、

行政代執行は、
役所が無料で解体してくれる制度ではない

ということです。

行政が所有者に代わって工事を行っても、
その費用は所有者側から徴収される仕組みです。

▶ 国土交通省

▶ 行政代執行とは?強制解体の流れと費用・差し押さえのリスクを解説


所有者が分からなくても行政は解体できる?

所有者を調べても分からない特定空家等には、
略式代執行という仕組みがあります。

必要な調査をしても、
措置を命じるべき所有者等を確認できない場合に、
市町村が所有者に代わって除却などを行う制度です。

つまり、

所有者が分からないから、
危険な空き家を永遠に放置するしかない、
というわけではありません。

改正空家法では、
略式代執行を行ったあとに、
所有者等が判明した場合などの費用についても、
強制徴収できる仕組みが整えられています。


管理不全空家になったら必ず特定空家になる?

必ずしもそうではありません。

管理不全空家等の段階で、

  • 屋根や外壁を修理する
  • 危険な部分を補修する
  • 樹木を剪定する
  • 定期的な管理を再開する

など、
必要な改善を行えば、
状態の悪化を防ぐことができます。

そもそも管理不全空家の制度は、

危険になるまで待って、
罰するための制度ではありません。

特定空家になる前の段階から、
所有者に適切な管理を促すための仕組みです。

【PR】空き家を所有している方へ

もしこの記事を、

  • 近隣から空き家が危険だと指摘された
  • 役所から管理について連絡が来た

という、
所有者側の方が読んでいる場合は、
放置せず早めに今後の対応を考えましょう。

修繕して残す方法もありますが、
建物の傷みが進んでいる場合は、
解体した方がいいケースもあります。

ただし、
解体するかどうかを決める前に、
どのくらい費用がかかるのかを確認しておくことが大切です。

▶ 解体工事の見積もりを確認する


今にも倒れそうな空き家でも順番どおり進むの?

ここで出てくるのが、
2023年の法改正で創設された、
「緊急代執行」です。

災害など非常の場合で、
特定空家等について、
緊急に除却などを行う必要があり、
通常の命令等の、
事前手続きを行う時間がない場合には、
その一部を経ずに、
代執行できる仕組みがあります。

ただし、

危険だと通報すれば、
その日のうちに役所が解体してくれる

という制度ではありません。

緊急性や、
建物の状態などを行政が判断します。

人命に関わるほど切迫した危険がある場合は、
通常の空き家相談だけでなく、
状況に応じて、
警察や消防への連絡も考えてください。


「特定空家にしてください」と近隣住民が要求できる?

役所へ相談したり、
危険な状態を通報したりすることはできます。

しかし、

管理不全空家等・特定空家等に、
該当するかを判断するのは市町村です。

近隣住民が指定を決めることはできません。

そのため、

「特定空家にしてください」

だけではなく、

「先週より傾きが大きくなっています」
「昨日、瓦が道路へ落ちました」

など、
具体的な状況や変化を伝える方が大切です。


役所へ通報したのに何も変わらないのはなぜ?

危険な建物が目の前にあるのですから、

「なぜすぐ対応してくれないの?」

と思うのも無理はありません。

ただ、
空き家も個人の財産です。

行政が所有者の建物に、
強制的に手を加えるには、

  • 現地確認
  • 所有者調査
  • 通知

など、
法律に基づいた手続きを、
適切に進める必要があります。

そのため、外から見ると、
役所が何もしてくれないように感じることがあります。

実際には所有者を調べたり、
連絡を取ったりしている途中ということもあります。

ただし、
危険な状態が進んだ場合は、
遠慮せず再度相談してください。

「前回相談したときより建物が傾いています」

「今日、瓦が道路へ落ちました」

というように、
前回から何が変わったのかを、
写真などと一緒に伝えると、
状況を説明しやすくなります。

行政へ相談している間にも、
空き家の状態が悪化する可能性があります。

万が一、
隣の空き家が自宅へ倒れてきた場合の責任や、
火災保険が使える可能性については、
こちらで説明しています。

▶ 隣の空き家が自宅に倒れてきたら誰の責任?損害賠償・火災保険・倒壊前にできる対策


危険でも近隣住民が自分で手を出してはいけない

役所へ相談しても、
すぐ状況が変わらないと、

「だったら自分で何とかしよう」

と思うかもしれません。

しかし、

  • 勝手に敷地へ入る
  • 瓦を降ろす
  • 柱を支える
  • 所有者の許可なく解体業者を呼ぶ

といったことは避けてください。

他人の所有物という問題だけでなく、
建物自体が非常に危険だからです。

解体現場から見ても、
傾いた建物や腐食が進んだ建物は、
見た目以上に危険なことがあります。

柱一本、壁一枚を動かしたことで、
建物全体のバランスが崩れる場合もあります。

危険だからこそ、
自分で手を出さないことが大切です。

まず行政などへ相談し、
人の安全を最優先にしてください。


まとめ

隣の危険な空き家を、
役所へ通報したからといって、
すぐに解体されるわけではありません。

大まかな流れは、

通報
↓
現地や所有者などの調査
↓
管理不全空家等・特定空家等の判断
↓
指導・勧告など
↓
必要に応じて命令
↓
一定の場合には代執行

となります。

近隣住民にとって大切なのは、

役所へ電話したら、
すぐ解体してもらえると考えるのではなく、
危険な状態を行政に把握してもらうことです。

そして、
状態が悪化したら写真を残し、
その変化を再度伝えてください。

所有者が分からない場合にも、
略式代執行や、
財産管理制度など、
法律上の対応方法があります。

危険な空き家ほど、
自分で何とかしようとせず、
行政など適切な窓口へ相談しましょう。


本記事は、
解体現場に25年以上携わってきた筆者の経験と、
2026年10月時点の、
空家法・国土交通省の公表資料をもとに、
一般の方にも分かりやすくまとめています。

なお、国土交通省の、
「管理不全空家等及び特定空家等に対するガイドライン」は、
2026年9月3日に最終改正されています。

▶ 国土交通省

 この記事を書いた人

秋ちゃん
解体業に25年以上従事。
1級建設機械施工技士/建築物石綿含有建材調査士。
木造・RC・鉄骨解体、アスベスト除去(レベル1〜3)など、
現場責任者として多数の解体工事に携わる。

 ▶プロフィールはこちら


よくある質問(FAQ)

Q1.管理不全空家と特定空家の違いは何ですか?

A. 管理不全空家等は、
このまま放置すれば特定空家等になるおそれがある状態です。

特定空家等は、
倒壊のおそれなど、
周囲への悪影響がより深刻になっている空き家などをいいます。


Q2.近所の人が通報すると特定空家に指定されますか?

A. いいえ。

通報は行政が状態を把握するきっかけになりますが、
特定空家等に該当するかを判断するのは市町村です。


Q3.役所へ通報したら現地を確認してくれますか?

A. 必要に応じて現地確認などが行われます。

相談するときは、
危険ですだけではなく、
傾きや落下物など具体的な状況を伝えましょう。


Q4.管理不全空家になると固定資産税は6倍になりますか?

A. 管理不全空家等になっただけで、
すぐ税額が6倍になるわけではありません。

市町村から勧告を受けると、
住宅用地特例から外れます。

小規模住宅用地では、
固定資産税の課税標準を1/6とする特例がなくなりますが、
実際の税額は、
負担調整措置などによって異なります。


Q5.特定空家に指定されたらすぐ解体されますか?

A. いいえ。

通常は、
助言・指導、勧告、命令などの段階を経て、
一定の要件を満たした場合に代執行へ進みます。


Q6.所有者が分からない空き家でも行政は解体できますか?

A. 一定の要件を満たせば、
所有者等を確認できない特定空家等について、
「略式代執行」が行われる場合があります。


Q7.行政代執行と略式代執行の違いは?

A. 通常の行政代執行は、
所有者が分かっているものの、
必要な措置を行わない場合などに行われます。

略式代執行は、
必要な調査をしても、
措置を命じるべき所有者等を、
確認できない場合に使われる仕組みです。


Q8.今にも倒れそうなら緊急代執行できますか?

A. 災害その他非常の場合で、
緊急に措置する必要がある特定空家等には、
緊急代執行の制度があります。

ただし、
近隣住民から通報があれば自動的に行われるわけではなく、
市町村が状況を判断します。


Q9.役所へ相談しても改善されない場合はどうすればいいですか?

A. 建物の傾きが大きくなった、
瓦が落ちたなど状況が変化したら、
写真などを残して再度自治体へ伝えましょう。

人命に関わる切迫した危険がある場合は、
状況に応じて警察や消防への連絡も検討してください。


解体費用・手続き・税金・業者選び・近隣トラブルなど、
解体工事でよくある疑問は、
Q&A形式で分かりやすくまとめています。

▶ 解体に関するよくある質問一覧はこちら


スポンサーリンク


コメント